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エレベーターにて……

第1章 夢、風鈴、迷子は、終わったって!?

「じゃあ、もし、この世に私とあなたと二人だけだったらどうします?」

「なに、子供みたいなこと言ってるんですか!? そんなこと有り得ないでしょ!! でももし、そうなったら、わからないですよ。この世の人類が滅亡して、二人しか残ってなければ、子孫を残すために一緒になるかもしれませんけどね……なってたら……の、話ですよ!!」

 由留衣は強く言うと、太丸は合掌し、正座した状態で頭を深く下げた。

「ちょっとちょっと!! 盆納さん!! 祈らないでください!! 祈っても、そうならないですから!!」

「それでチャンスがあるのなら、かけるしかないじゃろ!!」

「もし、なにかあって私達まで死んじゃったらどうするんですか!! ま、でも、このビルは古いですけど、耐震設備はしっかりしていますし、このエレベーターも、故障はしていますが、災害には強い構造になってますから。火災が起こったら、外からの熱が入らないようになってますし、万が一ビルが崩れても、このエレベーターが潰されることはありませんし」

「故障してたら、説得力はありませんぞ。てか、故障以外に扉が開かなかったりすることはあるんですか?」

「まあ、なにか危険があったら、中の人を守るために、一時開かなく……」

 最後まで言いかけた時、ふと、なにかを思って、由留衣は立ち上がった。

 そして、エレベーター内に貼ってある注意書を読んだ。

「……地震や火災などの緊急事態が起こった場合、外からの被害が及ばぬように、中から開けられなくなる場合があります……しばらくして……」

 由留衣は読むのを止めた。

 そして、扉の横の「開」のボタンを、おそるおそる押してみた。



『チン』


 音が鳴った。


 そして、エレベーターの扉が開いた。









 扉が開くと、目の前が、大きく開けたように感じた。








 いや、実際に開けていた。





「嘘……」と由留衣は呟いた。




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