テキストサイズ

エレベーターにて……

第1章 夢、風鈴、迷子は、終わったって!?

 太丸は己の頭を、ブンブンと振った。

 終わっていない。

 まだ、終わってないんだ。ハッキリと……今一度、ハッキリと打ち明けよう。

「失礼しました、下賀さん。あの……私、あなたのことが」

「御断りします」






 終わった。

 間違いなく終わった。

 自分の中で否定してから数秒で、ENDを迎えた。


 でも、諦めなかった。もう、赤っ恥はかいた。これ以上の恥ずかしさはないだろう。

 後悔なんて怖くない。

「いや、私、下賀さんに心を奪われました」

「それ以上言いますと、警察呼びますわよ」

 もう呼んでいるだろう。

 下賀は目をつりあげ、口をツンと上げた。

「はぁ、こんなおじんにコクられるなんて最悪。助けに来なきゃよかった。なぜ、いきなり変な方向に覚醒してんのさ。バカじゃない!?」

 太丸は黙ってうつむくしかなかった。

 それは、ごもっともだ。自分が、由留衣の立場なら、間違いなくその年のワーストニュース5位以内は確実だ。

 太丸は、体勢をかえ、土下座をした。

「ここまで頼んでも無理ですか?」

「無理に決まってるじゃないですか。なにを言ってるんです?」

 太丸は頭を上げ、目を細める。

「ほぅ……ここまで頼んでも無理と言うんでしたら……私も考えがございますよ」

「なにをする気ですか?」

「お嬢さん、あなた……このまま無事に出られると思わないでください」

「だから、これから警察が来ますから」

「冗談でございます」

 太丸は謝罪の意味で、再び頭を下げた。

 由留衣は大きくため息をつくと、横目で太丸をジッと見る。

 そして、正座をするように足をそろえ、爪先を立てた。

「あの……盆納さん。そこまで言えるのでしたら、別に私でなくてもいいじゃないですか。世の中の女性は私だけじゃないんですよ。出会いなんて、この先まだまだありますよ」

 太丸は顔をしかめる。

「今まで、1度も出会いなんぞなかったから、こうなっとるんじゃ。今が初めての出会いでチャンスなんじゃよ。こうやって二人きりで向かい合って、話をすることなんて、これから先、あるかどうかがわからんじゃろ。無責任なことは言わないでくれんか」

「いや、でも、あるかないかは、わからないじゃないですか。私は歳上は苦手です。あなたとお付き合いは、できません」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ