テキストサイズ

ねぇもう嫌・・・

第22章 時に神を憎むほどの出来事が襲っても…



「ぅぅっ…っ」




嗚咽が漏れ、胸いっぱいに悲しさが広まる。




『…ありがとね。』




柊先生がそばに来て、私を強く抱き締めた。




伝わるその温もりと




私の左頬と彼の左頬が重なる感触と




そっと支えた彼の背中と、私の背中に掛かる彼の手。




胸が締め付けられ、零れた涙が頬を伝わって黒シャツに染み込む。




『本当にありがとう。』




柊先生の声が、真っ直ぐ私に届く。




「んっ、ぅぅ…」




私の気持ちがうまく伝わってるのか、




その蟠(ワダカマ)りがとけるまで、




私はずっとこのままで居たい。




いつかちゃんと言葉に出来るまで、




そして伝わるまで。




医者と患者の壁なんか、




乗り越えなくたっていいから。




厚い隔たりがあったって、




私はこれまでの診察と治療と検査で、




何度もその優しさを感じることが出来たんだから。




もっと確かで柔らかい熱い愛情を、




今目の前にいるこの人から受け取ったとき、




私はどうなってしまうんだろう…。




「っ…」




私は彼の背中の上で、ぎゅっと拳を作った。




ストーリーメニュー

TOPTOPへ