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ねぇもう嫌・・・

第22章 時に神を憎むほどの出来事が襲っても…



『っ…』




最後にぐっと身体を引き寄せ抱くと、柊先生が離れた。




見つめ合う二人。




『…俺はこのままでいいの?』




私の右肩に柊先生の左手が残ったまま、




柊先生はそう私に訊く。




「…っ」




鼻をすすりながら大きく頷いた。




『…そう。』




柊先生は不満げに見えた。




やっぱり、私がちゃんと言わなかったからだ。




もっと具体的に、過不足なく、ありのままを…。




言いたいのに言えなかった胸の内を…。




信じては裏切られたけれど。




それでも不信の念を抱いたことは無かった。









肩にのし掛かる重さが消え、柊先生がベッドから降りた。




ふと高鳴る鼓動に気づく。




ドキドキ…してたんだ。




苦しい…だけど、不思議と愛しい。




このドキドキ、忘れたくない…。




もう一度瞬きをして目尻に溜まった涙を横に流すと、




私は親指を外に出るように拳を作った。




『これで身体を拭きな。』




いつの間に用意してくれたのか。




柊先生が暖かいタオルを渡してくれた。




そっと受け取り、




「ぁ…、っ。」




ありがとうと礼を告げるつもりだった。




『ん?』




「っ」




だめだ、言えない。




こんな簡単で小さな事も出来ないなんて、私最低だ…っ。




少し大袈裟に首を振った。




『…すぐ戻って来るから、その間に拭きな。』




柊先生は少し考えて、病室をあとにした。




残された私は、すぐに拭き始めた。




「っ…」




あの人に密着した身体。




拳を作った手で胸に当ててみる。




治まっていく動悸と、火照る顔。














"好きだから"














先生は確かにそう言ったんだ。




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