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今日も明日も 2nd season

第34章 愛しい人 *赤+紫×青*



「…智くん」

優しく毛布の上から、固まりをほぐすように撫でる


何度も、何度も

根気よくそれを続けていれば

その柔らかい布の下の智くんの強張りが少しずつ緩んでいって

やがてゆっくりと、毛布から黒髪が見えてきた


ー…まだ焦るな

そう、自分の胸に言い聞かせ

智くんが自分で顔を出すまで、慈しむようにその固まりを優しく撫で続けた


「翔、ちゃん…」

「やっと…顔見せてくれた」

まだ怯えを見せる瞳に自分のそれを合わせ、安心させるように微笑んで見せる


怖くない、大丈夫

小さな子どもをあやすみたいに静かな声掛け


貼り付けた笑顔の下に隠した本心は絶対に見せないように



そっと手を伸ばすと、ビクリと肩を震わせたけど

目尻に溜まった涙を指で拭おうとする俺に拒否は見せなくて

されるがままに、目を細めて俺をじっと見つめている

指にかかる智くんの吐息

…ズクン、と胸が鳴った



「智くん…」

指をそのまま頬に添える

だけど智くんは何も言わない

「ごめん…」

小さく呟くと、智くんの唇に


触れるだけのキスをした

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