
今日も明日も 2nd season
第4章 見えない鎖 Ⅹ
「…っ」
かずくんの動きがぴたりと止まる
一瞬目を見開いて、驚いた顔をしたものの俺を押し返す事はしない
…いや、出来なかったのか
でもいいや、今はどっちでも
そんな事考えてる場合じゃない
「かずくん、見て。俺分かる?」
顔を両手で挟み、彷徨うかずくんの目を何とかして俺に合わせた
だけどそう簡単には視線が合う事がない
かずくんは俺に抱き締められていながら、目の前にいる俺が見えてない
「まーくん…、まーくん…どこ?」
「ここにいる」
「どこ…っ」
「いるから…!」
顔を挟む手に知らず力が入る
その力に、かずくんの顔が痛みを訴えるように少し歪んだ
ハッとして力を弛めると
かずくんの目が確かに俺を捉えたのが分かった
「かずくん」
「あ……」
かずくんの目がみるみるうちに潤む
「…お兄ちゃん、来た……」
“怖い“ と俺にしがみつくかずくんがまた震え出した
「大丈夫だから」
大丈夫、なんて確証は全くないけど
はっきり言って俺だって怖いけど
「大丈夫」
俺にはそれを繰り返す事しかかずくんを安心させる術は見つからなかった
