
今日も明日も 2nd season
第4章 見えない鎖 Ⅹ
気になったのは
表札も何もないのに、当たり前に俺の名前を呼んだ事だ
下にいたのはやっぱり偶然なんかじゃない
かずくんのお兄さんは、本当に調べ尽くしている
「まーくん…、なんで…っ」
なかなか震えの治まらないかずくんは真っ青になっていて
一生懸命紡ぎ出されたその声も、掠れて消え入りそうに儚い
「大丈夫…大丈夫だから…」
「何でお兄ちゃんが…っ」
ああ、かなりかずくんはパニックになってる
大きく震え、青い顔を必死に横に振って
抱き締められても視線は俺を捉えようとしない
「まーくん、どこ…っ」
抱き締めてるのは俺なのに、それも分からない程混乱している
どれだけの破壊力なんだよ
たかが声でここまでなるなんて、聞いた話のそれ以上に、かずくんは辛い目に合っていたって事じゃないか
とにかくかずくんに俺を認識させないと
まともに呼吸も出来てない様子から、過呼吸にでもなりそうだ
俺は半ば強引にかずくんを抱え上げ
リビングのソファーにその身体を運び、ゆっくりと座らせた
勿論俺もすぐ隣に腰掛ける
そして
これが有効的なのかなんて分からないけど
かずくんの唇に自分のそれを重ね合わせた
