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原稿用紙でラブレター

第2章 年上彼氏の攻略法






唯でさえ外でお茶することなんてないのに、こんなオシャレなカフェに連れてこられるなんて。


周りにはアフター5を満喫してるOLや、パソコンを叩きながらタブレットにも目を向けるビジネスマンやらが居て。


こんな地味なスーツ姿の俺なんてどう考えても場違いなのに。


向かいで頬杖をつきながらチョコレートパフェをつつく松本先生をじっと睨みつつ、居心地の悪さに背中が縮こまった。



…今日はせっかく相葉くんとの時間が取れそうだったのに。


相談ってなんだろ…?


あ、ていうか学校に戻んなくていいんだっけ…?



「…松本先生」

「はい?」

「あの、今日ってこのまま帰宅していいんでしたっけ…?」

「あぁ、ちゃんと学年主任に伝えてますよ。大丈夫です」


そう言ってチョコアイスに刺さったウエハースをパクッと食べる。



学年主任って…大野先生だよね。


え、大丈夫なのかな…



連絡体制に若干の不安を覚えつつ、未だ何も話そうとする気配のない松本先生を見遣った。


「あのー…ちょっと聞いていいです?」


コーヒーカップを口元に運ぼうとした時、ぽつり小さな声が届いて。



「相葉とどこまでいってます?」

「っ、…ごほっ!」


口をつけた瞬間そんなことを言われて、思いがけずコーヒーが気管に入ってしまった。


激しく咳込んで苦しくて涙が出てくる。



…えっ!?


どっ、どこまでって…!



尚も咳込む俺に"大丈夫です?"と、大して心配していないような声をかけてくる松本先生。


呼吸を整えてやっと落ち着きを取り戻すと、そんな俺を待っていたかのように食べ終えたパフェの容器を端に置いてずいっと身を乗り出してきた。


「相葉とどうなってます?今」


さっきは聞き間違いかと一瞬思ったけど、そうじゃなかったようで。


改めて繰り返されたその質問に一気に顔に熱が集まるのを自覚する。


「そっ、そんなこと…」

「そんなこと?」

「な、なんでっ…松本先生に言わないといけないんですか…!」

「え~だって…」


脳裏に相葉くんの顔がふっと浮かぶ。


「だって…恋人だったらシたいと思いません?」


組んだ腕をテーブルに乗せて大きな瞳が俺を見据えてそう言った。

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