
原稿用紙でラブレター
第2章 年上彼氏の攻略法
突然声を掛けられ二度見して急ブレーキをかけた相葉くんが、案の定驚いた顔をこちらに向けた。
「まっ、まつじゅ…先生!?」
驚きながらも慌てて言い直して、サドルから降り両脚を地面につける。
思わず松本先生の後ろに隠れてしまっていた顔をひょこっと覗かせると、更に驚いた顔の相葉くんと目が合って。
「えっ!にのちゃん!?」
その顔が途端に嬉しそうな笑顔に変わって、恥ずかしいと思いながらもドキドキと胸が高鳴る。
「あ…ごめんね、たまたま通りかかって…」
「そ。たまたま通りかかってさ」
チラッと俺を見た松本先生の目がニヤけているのを無視して、相葉くんに声を掛ける。
「今からバイトですよね…?急がないと…」
すると、え?と云う様な顔でスマホを確認しだす。
「…あ、にのちゃん見てなかったんだ。
今日ね、入る時間変わったんだ。
だから今から学校行こうと思ってたとこ」
そう言って照れ笑いを浮かべて。
「けどまさか会いに来てくれるなんて…超嬉しい」
へへっとはにかんで真っ直ぐに見つめられる。
その瞳にきゅんと胸が締め付けられた。
…俺だってまさか会えるなんて思ってなかったもん。
少しでもタイミングがずれてたら、それこそ完全に行き違ってただろうに。
こんな些細な偶然も、きっと俺たちにとっては必然なのかな…
「あのー…」
その声に我に返ると、腕組みをしてじっとりした視線でこちらを見る松本先生が。
「俺、忘れてません?」
「いえっ、すみません」
「ま、いいですけど…
あ、それより今から時間あります?」
ふいのその言葉に目を上げると、相葉くんも松本先生に視線を向けた。
「ちょっと相談したいことがあって。
どっかでお茶しません?」
「え」
「相葉、悪いけど二宮先生借りるわ」
「えっ?」
そう言うと返事を待たずにぐいっと俺の腕を取って歩き出して。
「ちょ、にのちゃん!」
「大丈夫だって、捕って食ったりしないから」
相葉くんの肩をポンと叩き"じゃあまた"と手を振ると、唖然とする相葉くんを残して俺を引きずるように再び歩き出す。
ちらり振り返れば寂しそうな顔でポツンと佇んでいて。
隣の松本先生の横顔に戸惑いながら、されるがまま連れて行かれた。
