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原稿用紙でラブレター

第2章 年上彼氏の攻略法






"シたくなりません?"


という松本先生の言葉が脳内にリフレインして。



自分でも分かるくらい目が泳いでいる。


今まで敢えて触れてこなかった部分。


これ以上は望めない、望んでもきっと叶うことはないと思っていたから。


傍に居られるだけで、温もりを感じられるだけで十分。


本当にそう思ってた。


だけど…


やっぱり…
そういうもの、なんだ…


《付き合う》って、そういうことなんだ…


ただ想い合ってるだけじゃ…
だめってことだよね…?


じゃあ、もしかしたら相葉くんも…



そう思ったら急に物凄く恥ずかしくなってきて。


火照り出す頬を隠すようにごしごしと両手で擦ってみる。


「いっつもイイとこまでいくんですけどねぇ…
いざとなると翔が恥ずかしがっちゃって」


ふぅっと溜息を吐きながらさらっと口にする松本先生。


「…え?」

「ん?いやだから、脱がせるまではいいんですけど」

「っ、先生っ…!」


いきなりの飛躍した内容に堪らず声を上げる。


一瞬、脳裏に松本先生と櫻井くんの画が浮かんでしまって。


ふるふるっと頭を振って脳内映像を必死に散らす。


「あ、そうだ。二宮先生は抱きたいんですか?
それとも抱かれたいんですか?」

「…は?」

「ほら、どっちがどっち役かって話」

「……」


トドメの松本先生のその言葉に、今まで何とか動いていた頭の回路が完全にショートした。


「まぁ、聞かなくても分かりますけど」


対面でぶつぶつ言っている松本先生の言葉が遠くに聞こえて。


「…さて、帰りますかぁ。あ、ここ俺が出します。付き合ってもらったんで」


伝票を持って立ち上がった気配に、止まっていた思考がゆっくりと動き出す。



…どっちが、どっち?



「二宮先生?大丈夫です?」


顔の前で手の平を振られ、ようやくこちらを覗き込む松本先生の顔にピントが合った。


「あー…すみません。先生にはちょっと刺激が強すぎました?」


そう言って苦笑いをするとポケットからスマホを取り出して。


「…あ、翔だ。じゃ、俺ここで。
また明日」


きれいな笑顔を残し伝票を手に出口へ向かう後ろ姿を、ただぼんやり見つめることしかできずに。



どっちがどっちって…


…えぇっ!?

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