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原稿用紙でラブレター

第2章 年上彼氏の攻略法






大きな声を上げた俺に驚いて肩を揺らしたにのちゃんが、ぽかんと口を開けてこちらを見つめる。


「俺がっ!俺が悪いんだっ…!」


テーブルに手をつき身を乗り出すようにして続けた。


「にのちゃんに気持ちを伝えきれてないのは…
俺のほうなんだ…」


ぎゅっと拳を握ると、対面のにのちゃんは口を結んで居住まいを正し窺うような眼差しを送ってくる。


「俺ね、にのちゃんと付き合うようになってからさ…ほんと毎日楽しくて。

今まではさ、ずっと追いかけてきたじゃん。
けどそれが叶って両想いになって…
なんか、それだけで俺…」



それだけで…


…勝手に満足しちゃってたんだ、きっと。



「…俺には十分過ぎるくらい届いてたよ、にのちゃんの気持ち。
なのに、俺…」



…俺は何してたの?


会えない時間が増えれば増えるほど、ただ不安にさせてただけじゃないの…?



「ごめんね、こんなに好きなのに…

にのちゃんのことこんなに…好きなのにっ…」


言いながら声が震えてくるのが分かった。



…だめだ、泣いちゃだめだ。


俺が泣いてどうする。


ちゃんとにのちゃんに伝えなきゃだめだろ。



込み上げてくる熱を堪えようとぐっと奥歯を噛み締めた時、しんと静まり返っていた部屋の空気が動いた。


その次の瞬間には、ガタっというテーブルが動く音と体に伝わる軽い衝撃。



にのちゃんが、俺にしがみつくように抱きついていた。



…っ!?



突然の熱と重みに一気に心臓が跳ね上がって。


肩に顔を伏せて、俺のシャツの胸元をぎゅっと握り締めたままじっと動かない。



に、のちゃん…?



その肩にそっと触れると、ぴくりと僅かに動かしてゆっくりと顔を上げた。


メガネの奥で潤ませた瞳は揺れながら俺を見上げる。


前髪に隠れ剥がれかけた冷却シートが、火照った顔を物語っていて。


急に訪れたこんな展開に、爆発しそうなほど顔に熱が集まる。



に、にのちゃん…!


や、ば…



「…相葉くん」


その瞳から目を離せないでいると、目の前の薄い唇からぽつりと俺の名前が発せられた。

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