
原稿用紙でラブレター
第2章 年上彼氏の攻略法
きゅっと唇を結んだにのちゃんも伏せていた瞳をこちらに向ける。
メガネ越しに潤んだ視線を寄越され、止めていた息をゴクッと呑みこんだ。
「昨日は、勝手に帰っちゃって…ごめんなさい、」
ペコっと頭を下げてそう言うと、膝に置いていた拳をぎゅっと握り直す。
「…心配かけたでしょ?電話も出なくて…」
しんと静かな部屋にぽつりぽつりとその声が紡がれて。
俺も伝えたいことはあるけど、今はにのちゃんの言葉をちゃんと聞かきゃと、そう思わせる様な雰囲気が漂っていた。
「ずっと、ずっとね…考えてたんだ。
…相葉くんのこと、」
ふいに俺の名前が出て顔を上げれば、真っ直ぐこちらを見つめる視線とぶつかる。
「…ずっと考えてるの、もう…ほんとに。
抑えらんないくらい…俺、」
そこまで言って言葉に詰まり、下唇を噛み締める。
にのちゃん…?
今にも泣きそうなのを堪えるようなその様子にぎゅっと胸が締め付けられて。
次の言葉を待たずに動き出そうとした時、再び顔を上げたにのちゃんが口を開いた。
「相葉くんが好きでっ…!
…好きなの。もう、ほんとに…」
真っ赤に染まった顔とはっきりとした声が、俺の視覚と聴覚にダイレクトに伝わって。
…えっ!?
思いがけないその言葉に、準備していた想いが飛びそうになる。
こんなに真っ直ぐにのちゃんから《好き》って言われるとは思ってなかった。
急な展開にドキドキが止まらない。
だってこんなに嬉しいことってある?
「だけど…」
一人静かに高揚していると、肩に力が入ったままのにのちゃんが目線だけを上げ窺うように見つめて続ける。
「…それって、ちゃんと伝わってんのかなって…。
伝えきれて、ないかもって…」
え?なにが…?
「こんなに…好きな気持ち…
相葉くんに、ちゃんと伝えて…なかったから、」
いや、そんなこと…
「だから…こんな、こんな俺で…
相葉くんはほんとに、いいのかなって…」
…違うよ、
それは俺が…
「相葉くん、俺のこと…」
「っ、待って!」
思わずその先の言葉を遮ってしまった。
というか、その先は言わせてはいけない気がして。
