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原稿用紙でラブレター

第5章 青いハートに御用心





「進路の相談で…いいですか?相葉先生に…」

「っ、もちろんですよっ…別に私は…」


くるり丸い瞳に覗き込まれ思わず目を逸らしてしまい。


"ありがとうございます"と付け加えて自席へ戻っていった知念くんに背を向けて。


そそくさと教室から出て溜息をひとつ。


…知念くんからあんなこと言われるなんて。


やっぱり俺そんなに顔に出てる?


教科書類を抱えて頬を撫でつつペタペタと廊下を歩いていると。


「二宮せんせぇ~!」


前方から手を振りながら駆け寄ってきたのは加藤先生だった。


胸に手をやり呼吸を整えてから大きな瞳を更に見開いて口を開く。


「二宮先生、今日までお世話になりましたぁ」

「あ…いえ、こちらこ」

「もぉほんっと先生には色々お世話になってぇ!」


口元に拳を作って続ける加藤先生は相変わらずのマシンガントーク。


もうすぐHRが始まるというのに廊下で立ち話なんかしてちゃマズい。


「あの加藤先生、一旦職員室に…」

「そうだ、聞いてくださいよぉ!」


制止しようと試みたものの、お構いなしに肩を叩かれてよろめいてしまい。


初っ端からぐいぐい来られていたから慣れてはきたけれど。


それも今日で最後かぁなんて思うとそれはそれでちょっと寂しかったりして。


なんだかんだで一生懸命な加藤先生。


生徒に対してもそれは変わらなくて、本当に裏表が全くない人。


…あ、そういえば大野先生のことどうなったんだろ?



「そしたらぁ、大野先生ってば僕の下の名前知らなくてぇ〜」

「あのっ!えっと…その、大野先生とのことって…」


丁度のタイミングで大野先生のワードが出たから窺いながらそう問い掛けてみた。


すると、思いもよらない答えが返ってきて。


「あ~…んふっ。実は僕ぅ、他に気になる人ができてぇ…」

「…ぇ?」

「もぉナイショですよぉ?
実はぁ…相葉先生なんですぅ!」

「っ…えっ!?」


きゃはっと笑う加藤先生に思いっ切り聞き返す。


は?え?相葉くんっ!?


「リレー超カッコ良くなかったですかぁ?あれからずっと気になっちゃってぇ」

「あっ、あの…」

「僕たち今日で最後じゃないですかぁ?だからもう言っちゃおっかなってぇ…」

「だめっ!」


気付いたら加藤先生の腕を掴んでそう叫んでしまっていた。

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