テキストサイズ

原稿用紙でラブレター

第5章 青いハートに御用心






居場所も連絡先も知らない今も。


その写真を大事に取っているということが、大野先生の想いが本物だったっていう何にも代え難い証明なんだ。


だから、真っ直ぐな知念くんの想いはしっかりと受け取って。


大野先生も真っ直ぐに、決して中途半端なことはせずに応えてあげたんだと思う。


知念くんならきっと大丈夫。


本当は芯がしっかりしていて強い心を持っているに違いないから。


直向きさはその人の持って生まれたもの。


ブレない姿勢はこの先きっと彼にとって武器になる。


それが魅力であり持ち味で…


知念くんを見ているとどうしても相葉くんが重なってしまうのは、きっと二人が似ているからなんだろうな。


でも相葉くんはたまに直向きさが違う方向に行っちゃって、とんでもないことやらかしたりするけど。



使ったティッシュを丸めて遠くのゴミ箱に投げ入れる様子にふふっと笑みが零れる。


「よし入ったぁ!見た?今の見たっ?」

「うん、見た見た」

「俺凄くない?にのちゃん褒めて!」

「わっ、ちょっ…!」


体育座りしていた俺にいきなり圧し掛かってきて抱き着いてくる相葉くん。


こういうとこはまだまだ子どもだなってほんとに思うけど。


ぎゅうっと抱き着く温もりを感じつつ、大野先生との話で最後に言われたことを思い出した。


これは、相葉くんには話さなかったこと。



『あとさ…二宮先生に一つだけお願いがあんだ』

『……はい』

『相葉のこと、これからもよろしくな』

『……ぇ?』

『ほら、アイツすぐ泣くし、集中したら周り見えなくなるし、まだまだガキじゃん。いつまで経っても心配かけやがって』

『っ…』

『だからずっとアイツの横に居てやってくれよ。
アイツ…相葉は、俺の大事な教え子だからさ』



そう言って笑ってくれた顔は、込み上げてきた涙で滲んで見えなくなってしまったけれど。


きっと、高校生の相葉くんにも当時の自分を重ねていたんだろう。


ひたすらに俺へと向けられる想いが本物だと知り。


一番近くでずっと支え続けながら、叶わなかった自分自身の未来をそこに投影して。



大野先生。


俺、絶対約束守ります。


これから先も…
ずっとずっと、相葉くんの隣に居ますから。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ