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原稿用紙でラブレター

第5章 青いハートに御用心






大野先生と松本先生には"今更謝って回らないでいい"と言われたけど。


それじゃどうしても俺の気が済まなくて。


打ち上げに来ていた先生みんなに謝罪して回ったら、揃いも揃って残念そうな顔をされて。


なんなの…


そんなに俺の醜態が面白かったってこと?


ていうか…今まで何で教えてくれなかったの!


謝罪しながらも内心もやもやしつつ。


迷惑をかけたのは申し訳ないとは思うけど…さすがにこの仕打ちはひどくない?


もうぜっっ…たいお酒なんて飲まないし!


ようやく着いた自席で、マスクを引き下げて持参のペットボトルのお茶を流し込む。


いっぱい謝ったおかげで朝よりスムーズに声が出るようになったかも。


よし、と一息吐いてパソコンのキーボードに手を掛けた。


今日は体育祭の代休で生徒は休み。


職員は出勤して日頃出来ない業務をやることになっている。


教育実習生も今日は休みだから、相葉くんや加藤先生は居ない。


今日は相葉くん居なくて良かったな…


居たら帰るまで永遠二人にからかわれそう。


…あ、そういえば。


加藤先生、体育祭が終わったら大野先生に気持ちを伝えるって言ってたよね。


いつアタックするんだろ。


それから…


知念くんも。


体育祭の日。
あの一件の後、大野先生にどんな話をしたのか気になってはいた。


保健室で見た知念くんの瞳は、強い意志を持って光輝いていたから。


あんなことがあった後だから、もしかしたら想いを伝えるには至っていないかもしれない。


でもどうか、大野先生には。


どうか…
どんな形であっても受け止めてあげてほしい。


知念くんのあの真っ直ぐな瞳が、いつかの相葉くんのようで。


ただ真っ直ぐに想いを伝え続けてくれた、あの頃の相葉くんと重なったから。



ふと、隣にいつもあるはずの気配がそこにないことに気付いた。


意外と綺麗に整頓されている大野先生の机。


デスクマットの下にはメモや常用書類が挟まれていて。


……ん?


その中に見つけた少しだけ褪せた小さな写真。


あんまり人の物を勝手に見るなんてしたくないけど。


なぜか気になってしまってこっそり覗き込むと。


「……ぁ」


集合写真らしきその学ランの中に見知った顔を見つけ、思わず小さな声を上げた。

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