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原稿用紙でラブレター

第5章 青いハートに御用心





「まぁ俺が縛ってたからなぁ…相葉も我慢してたんだろうし」

「っ…!」

「ちゃんと約束守ったんだからそんくらい派手にやってもいいよなぁ」

「ちょっ…」


へらへら笑いながら楽しそうに言い放つ大野先生。


いつもなら"セクハラですよ!"って反論できるのに、今日に限ってはぐうの音も出ない。


ただただ赤い顔を隠すように小さくなっていると、大野先生の背後から聞こえてきたその声に嫌な予感が走り。


「あれ~?二宮先生どうしたんです?」


声色だけで分かる明らかにからかってやろうって雰囲気。


同じくニヤニヤした顔で近付いてくる松本先生に、マスクの中でこっそり溜息を吐いた。


「体育祭お疲れさまでした!いやぁ楽しかったですね」

「……」

「あの後相葉んちだったんですか?俺は翔んちに帰りましたけど」

「……」

「え、そんなに具合悪いんですか?また保健室連れて行きます?」

「いいですっ!」


振り切るように声を出せばイヒヒと笑ういたずらな瞳。


その場から逃げたくてドアに手を掛けようとしてふと動きを止める。


…そういえばまだ言ってなかった。


ショルダーベルトをぎゅっと握り締め、二人に向き直って。


「この間の打ち上げではかなり潰れちゃったみたいで…ご迷惑をおかけしてすみませんでしたっ…」


言い終えてぺこっとお辞儀をし顔を上げると、揃ってきょとんとした顔で見つめられ。


それから顔を見合わせ、また揃って同じ顔になる。


「マジか!あいつ言ったのかぁ~」

「しまった、口止めさせるの忘れました」


残念そうに顔を顰める二人に頭にハテナしか浮かばない。


…なに?
この二人はなにを言ってんの…?


俺の謝罪からの流れとは到底思えない会話に全く意味が分からなくて。


するとぽんと肩に置かれた手。


「あんな、先生。今更謝んなくたっていいぞ。
んなのみーんな知ってっから」

「……え?」

「そ。でも先生にそれ言ったらもう飲まないでしょ?だから、暗黙の了解で」

「…は?え?うそ…」

「めんどくさかったけど結構可愛かったよなぁ」

「ね。もう見れなくなるなんて残念ですね」


言いながらガラガラとドアを開けて中に入っていく二人。



待って、うそでしょ…


知らなかったの俺だけ…?


うわ最悪…
信じらんない!

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