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原稿用紙でラブレター

第5章 青いハートに御用心






体育祭明けの月曜日が憂鬱で憂鬱で仕方がなかった。


だって…


あんなこと聞かされちゃったら…


この重い足取りは間違いなく気持ちがそうさせるもの。


昨日相葉くんから聞いた打ち上げでの一部始終。


それからその後の相葉くんとの久々のコトも…


恥ずかしすぎて顔から火が出そう。


出来ることなら鼻までじゃなくて顔中マスクで覆ってしまいたい。


…完全にやっちゃった。


一昨日のことを何にも覚えてなかったなんて。


相葉くんから聞いた俺の振る舞いは、信じ難いくらいみっともなかった。


他の先生たちにもどれだけ迷惑をかけたんだろう。


今日どんな顔して職員室に入ればいいんだろうって、ベッドで寝込んだままずっと考えていて。


それから…


それから、相葉くんとのコトもほんとに記憶がなかったから。


俺から誘ってきたとか、キスしてって言ったとか…


それに"俺だけ見て"って言ったとか…


…うそだ、うそ!
絶対そんなこと言ってないもん!


そんな恥ずかしいこと言える訳ないし!


必死に弁明しようとしても昨日は全く声が出なかったから。


体調が悪いのをいいことに布団を頭から被ってひたすら現実逃避してた。


終いには相葉くんに"マジで何にも覚えてないのっ!?"って言われてガッカリさせてしまったし。


もうなんか…


ほんとごめんね、相葉くん。


年上の俺がこんな不甲斐なくてどうすんの、もう。



職員室のドアの前。


マスクの中ではぁと溜息を吐き。


とりあえず色んな先生たちに謝って回ろう。


そう意を決し、ぎゅっとショルダーベルトを握り締めてドアに手を掛けた。


「お、風邪か?」


背後から突然聞こえてきた間延びした声にぴくりと肩が揺れる。


振り向けば、あくびをしながら眠そうに近付いてくる大野先生の姿。


掠れ声で挨拶をしながらぺこっと会釈をすると、そんな俺を見てのんびりと続ける。


「何だよ、また熱ぶり返したのか?」

「ぁ…えっと、」

「…あ、ふ~ん。ほぉ~。なるほどな~」


大野先生にも漏れなく迷惑を掛けたに違いないから。
謝らなきゃと言い淀んでいたら、目の前で勝手に納得したようにニヤニヤしだして。

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