
原稿用紙でラブレター
第5章 青いハートに御用心
ズキっとした痛みを感じてゆるゆると瞼を開いた。
いつもの部屋の天井。
いつもの寝心地。
だけど、動かせないくらい体が怠い。
そして頭も痛い。
おまけにすごく暑い。
はぁと小さく息を吐く。
これは間違いなく風邪みたい。
昨日はすっかり治ったと思ったんだけどな…
やっぱりもっと体力つけなきゃ。
ふと昨日の体育祭の後の打ち上げを思い出した。
体調悪かったから自粛してそんなに飲んだつもりはなかったけど。
なんか周りの先生達がやけに勧めてきたからいつもより少しだけ飲んじゃったのかも。
それが祟っちゃったのかなぁ…
…ってあれ?
俺って昨日どうやって帰ってきたんだっけ。
そんなことをぼんやり思っていると、ふいに玄関の鍵がガチャガチャと開く音がして。
その束の間、バタンと入ってきた足音を聞いて見知った姿がすぐに浮かんできた。
「…にのちゃん!やっと起きた!」
言いながらガサガサとビニール袋を提げてベッドに近付いてきたのは、案の定相葉くんで。
目覚めたらこんな状態になってて一人でどうしようって思っていた矢先、突然の相葉くんの登場に心底ホッとした。
嬉しいけど…でもあんまり近付いたら俺の風邪が移っちゃうよね。
そう思って口を開いたけど全然声が出なくて。
…あれ?
「いやぁ良かったぁ。このまま起きなかったら俺どうしよって思ってたんだから」
ガサガサと袋から色んなものを取り出してローテーブルに置く相葉くんの背中。
必死に声を出そうと思っても喉が干乾びてるみたいに空気しか出ない。
えっ、なんで!?
声出ないし体も重くて動かせな…
「なんか食べれそう?うどんとゼリーとねぇ…」
一人喋り続ける相葉くんの背中を見つめつつ。
…まさか風邪が一晩でこんなに酷くなるなんて。
この状況にももちろんびっくりなんだけど。
待って、それより…
必死に辿る昨日の記憶。
打ち上げで相葉くんが俺の座ってる席に来てくれて。
お酒注いでくれて、それで…
…それで?
それからどうしたっけ?
ていうか…
なんで相葉くん俺がこんなに体調悪いって知ってんの?
