
原稿用紙でラブレター
第5章 青いハートに御用心
どんなエッチがいいのかなってつもりで聞いてみた質問だったけど。
"いっぱいキスしたい"だなんて何とも可愛らしい答えが返ってくるなんて。
角度を変えながら深く重なり合う互いの唇。
鼻に抜ける喘ぎを出して応えるにのちゃんが愛おしくて堪らない。
ふと巻き付けていた腕が緩まって俺の後頭部に回り。
それから辿るようにして耳から頬に滑る柔らかい手。
ちゅ、と音を立ててゆっくり離れた唇を目で追って視線を上げれば。
ピンクに染まったほっぺたと潤んだ瞳で見上げてくるそれとぶつかって。
はぁと熱い吐息を漏らして外されることのない視線。
「……相葉くん、」
小さく呟いた声は真っ直ぐに俺に届いた。
「相葉くん……俺のこと好き…?」
「っ…」
両頬をそっと包まれたまま投げられた言葉。
そんなの今更確認するの?って一瞬思ったけど、伝えてくる瞳はどこか不安そうに揺らいでいて。
「当たり前じゃん…好きだよにのちゃ、」
「言って?もっと…」
「…え?」
「もっと…言って、好きって…」
言い終えてじわりと水分量の増す瞳。
同時に頬を包む手がさわさわと不規則に動き、発せられたセリフと相まって途端に胸がざわつきだす。
「にのちゃん?どうし…」
「ねぇ相葉くん…?」
問い掛けを遮ってはっきりと名前を呼ばれ、包まれた手の平からもじんわりと熱が伝わってくる。
「相葉くん…お願い、俺だけ見て…」
「…っ」
「誰にもあげないから…相葉くんは…」
弱々しい声色とは裏腹に、強い色を纏って真っ直ぐに向けられた瞳。
そしてくいっと顔を引かれ唇を押し当ててきた後、ぎゅうっと首にしがみついてきた。
にのちゃんの突然の行動に驚いて一瞬声も出せなかったけど。
今のセリフや表情を頭の中で反芻して、そしてしがみついてくるこの温もりを実感して。
嬉しいとか愛おしいとか全部通り越してさ…
なんかもう泣けてくる。
そんなの俺だって…
いや俺のほうが絶対に。
返事の代わりに思いっ切り力を込めて抱き締め返せば、くぐもった呻き声を上げだした腕の中の温もり。
今この瞬間、触れ合っているのは体だけじゃなくて。
形のない互いの想いが、確かめ合うように手を取ってここに手繰り寄せられた気がした。
