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原稿用紙でラブレター

第5章 青いハートに御用心






体育科の先生以外は、日頃の運動不足が祟っているのか最早どんぐりの背比べ状態。


特に相葉くんのチームはどんどん離されていって、ついには最下位に落ち込んでしまって。


「あ~あ、めちゃくちゃ離されてんじゃん」

「ありゃきついなさすがに」


歓声に交じる笑い声をバックに隣でぼやく二人。


相葉くんがそろそろ準備を始める。


走者の行方を見守りながらも手足をぶらぶらと動かして。


同じく加藤先生も胸に手をやり深呼吸をしながら準備をしだした。


あぁ…加藤先生もがんばれっ…


そんな加藤先生の肩をトントンと叩いてグッと親指を立てて笑う相葉くんの姿。


その優しい気遣いに見ている俺がきゅんとしてしまって。


相葉くんのこういうとこすごく好きだし尊敬する。


自分のことより人のことを優先して気遣ってくれるそんなところ。


相葉くん、がんばって…



結局、最下位のまま引き離された状況で加藤先生へ渡ったバトン。


このままアンカーの相葉くんへ託されるんだろうと思っていた矢先。


応援席がワッと沸いたと同時にみるみる内に一人ずつ抜いていく加藤先生。


えっ!?


小柄ながらもくるくると足を動かして、しかも物凄い形相で。


「うおおおおおおおーー!」


普段とは掛け離れたドスの効いた声でそう叫びながら俺たちの前を疾走していく。


「あはは!いいぞいけぇー!」

「マジか!ちょー速くね!?」


その余りの迫力に圧倒されつつも、笑いながら声援を送る二人に倣って俺も。


「がんばれーっ!加藤先生ぇー!」


走り去る加藤先生へ大声援を送った。


手を挙げて待つアンカーの相葉くんへバトンが渡ったのは前から数えて四番目。


しっかりと握られたバトンを振り切って懸命に走る姿。


応援席からエールを送られながら風を切ってコーナーを曲がり。


一人、また一人と抜き去って。


あと一人っ…


「いけっ…相葉くんっ、いけぇーっ!」


思わずそう叫んでハッとした時にはもう遅く。


周りに居たクラス応援席の生徒から一同に注目を浴びてしまい。


しまっ…


恥ずかしくなって思わず俯いたと同時に、一段と歓声が沸き上がった。

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