
原稿用紙でラブレター
第5章 青いハートに御用心
ふいにグラウンドに響いたアナウンス。
それは教員参加リレーの開始を予告するもので。
「お、始まりますよ。行きましょ、特等席取ってあるんで」
言いながら身を翻して走っていく松本先生に慌てて着いて行くと。
ガヤガヤしたクラス応援席の間と間。
ちょうどそのブロックが途切れた所に見覚えのある姿を見つけて。
「翔、ありがと」
「おぉ…あ、ちわっす」
ニコッと爽やかな笑みで会釈してきた櫻井くん。
髪黒く染めたんだ…あ、就活か。
「大丈夫っすか?体調」
「あ、はいもう…はい、全然平気です」
「雅紀すっげー心配してましたよ。松潤に"なんで言ってくれなかったんですか!"って言ってたよな?」
「ふふっ、俺言ったっつーの」
至近距離でクスクスと笑い合う雰囲気はもう完全に出来あがったカップルそのもので。
なんか…
こうして二人を見ていると恥ずかしくなるというか…。
…もしかして端から見たら俺たちもこんな風に映ってんのかな?
そう思うと一気に顔が熱くなる。
こんなんじゃ生徒たちに噂されるのも当然だよね…
大野先生の言ってくれたことはごもっともだ。
ダメだ俺。
…ちゃんと気をつけなきゃ。
アナウンスと共に入場門から入ってきた教員たち。
その中に少し緊張したような相葉くんの姿を捉えた。
前に居る加藤先生に話し掛けたり、周りの先生たちのことをキョロキョロ見たりして落ち着きがない。
すると彷徨っていた視線がふいにこちらを向いて。
目が合った瞬間、パッと明るくなった表情。
そして右手で小さくガッツポーズをして、きっと"頑張るよ"の合図。
俺も口パクで"がんばれ"と添えて両手でぎゅっと拳を作って応える。
うわどうしよ…
なんか俺まで緊張してきたっ…!
どきどきと速まる鼓動を自覚しつつも、相葉くんから目が離せなくて。
日除けのキャップを被り直したり意味も無く手をグーパーしてみたり。
そうして紛らわそうと思っても、相葉くんの姿を見てしまうとどうにも緊張が伝染してくる。
ぞろぞろとスタートラインに立つ先生たち。
相葉くんはどうやら期待を十分に背負ったアンカーみたいで。
パン!と軽いスタートの合図と同時に沸く歓声。
落ち着かせようと思っていた鼓動は更に激しさを増した。
