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原稿用紙でラブレター

第5章 青いハートに御用心






背後から声を掛けてきたのはご機嫌な声の松潤。


なんでこうイケメンは普通のジャージ着てても様になるんだろう。


俺なんかスポーツブランドの力借りないとカッコつかないんだから。


くっそ、悔しすぎる。


「おはようございます。なんかすごいご機嫌ですね」


松潤の分かりやすい機嫌の良さに早速にのちゃんが反応した。


「ふふ、だって翔が来るんですよ?機嫌悪い訳ないじゃないですか」


ニヤニヤしながらのこんな公開ノロケも慣れたもので。


つーか前は翔ちゃんが学校に来ることあんなに嫌がってたのに。


男子校だから狙われるとかなんとか言ってさ。


さすがにもうそこまで束縛しなくなったのかな。


「そうだ。相葉先生、もし翔が来た時に手が離せなかったら俺と代わってくれます?」

「はい……あ、え?」

「だから、翔が来たら俺の係もやっといて」

「…はぁ!?」


いやいや余りに理不尽なことを正々堂々と言ってくるから一回返事しちゃったじゃん!


なんなんだこの人…


横で小さく笑うにのちゃん。


…いや可愛いけど笑いごとじゃないんですよ。


せっかくのにのちゃんとの係が減っちゃうじゃんか!


反論する間も無く朝礼の時間になって。


納得のいかないまま仕方なく職員室に足を踏み入れた。



***



生徒が続々と集まるグラウンド。


見渡す限り男だらけのその群れはある種異様な光景にも映る。


高校の頃はそんなの全然思わなかったけどな。


こうしてこっち側から見るとマジで迫力あるよな。


つーか男子校の体育祭なんてもうお祭りみたいなもんだから。


体育会系のヤツらなんか血気盛んで勝負事にはめちゃめちゃ燃えてたよなぁ…


つい数年前の自分たちのことを思い出す。


最後の3年の体育祭もクラスの代表でリレーを走ったけど優勝は出来なかったから。


今日は何としてもにのちゃんにイイとこを見せたい。


そんでいっぱい褒めてもらっちゃお…


開会式が進行される中、ポケットに入れていたスマホがふいにブルっと震えて。


そっと確認すると翔ちゃんからのメッセージ。


『雅紀寝坊したー!今から行くけどアイツには絶対言うなよ』


お願いされてるはずなのになぜか命令口調なメッセージに思わずふふっと笑みを溢した。

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