
原稿用紙でラブレター
第5章 青いハートに御用心
どんどんエスカレートしていく応酬合戦に成す術も無く。
ただただ小さくなって二人を交互に見つめるだけ。
大野先生を止めるのも変だし、かと言って俺だって悪いのに相葉くんを責めるのも違うし…
心の中でぶつぶつ呟いていたところに、急に感じた視線。
我に返ると大野先生が俺を見つめていて。
…え?
「それでいいか?二宮先生」
「えっ、あ…はい?」
何て言われたか聞いてなかったから聞き返したのになぜかそれを肯定と取られて。
「んじゃ決まりだな」
「えぇ?にのちゃん!なんで!?」
「えっ、なに?」
「俺明日から大ちゃんが担当になっちゃう!」
「えぇっ!?」
今にも泣きそうな顔で詰め寄ってくる相葉くん。
…そんな話だったの!?
「学年主任命令な。んじゃ、そゆことで」
そしてぽんと俺の肩を叩いてからまた相葉くんに向かって口を開き。
「それからな、体育科の先生がずっとお前のこと探してたわ。早く行かねぇと絞られんぞ」
「えっ、マジ!?」
ニヤリと口角を上げて言い終え、背中を丸めて書架の間に消えて行った。
その場に取り残された俺たち。
ふと相葉くんを見ると、この世の終わりみたいな顔で俺に縋りついてきて。
「にのちゃ~ん!俺明日から地獄だよ~!」
「ごめん…俺も悪かったね…」
「違うよ!大ちゃんが鬼なんだよ!」
ぎゅうっと抱き締められる圧が相葉くんの想いを表しているよう。
あー…
やっちゃったなぁ、俺も。
…ごめんね、相葉くん。
***
大野先生からの通達以降、授業以外はほとんど別行動になった俺たち。
今までは教科の授業に加えてHRまでずっと一緒だったから。
接点がこうも少なくなると話す機会も本当に激減して。
…まぁこの方が今の俺たちには良かったのかな。
俺もだいぶ反省しなきゃ…
「ちょっとなんでなんですかぁ~?」
HRが終わり教壇から生徒を見送った後。
生徒から受け取った日誌を手に、傍で拗ねたようにそう溢すのは加藤先生。
「なんで急に僕の担当が二宮先生になっちゃったんですかぁ!」
「えーっと…」
「もうっ、せっかく大野先生とお喋りするチャンスだったのにぃ!」
