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原稿用紙でラブレター

第5章 青いハートに御用心






その声に近くまで来ていた生徒も足を止め。


"はーいすみませーん"と言いながらバタバタと足音を鳴らし揃って図書室を出て行った。


まるで九死に一生を得たように安堵の息を吐く。


はぁ…危なかった…


未だ抱き竦められたまま相葉くんを見上げると、拗ねたように唇を尖らせて俺を見下ろしていて。


「…もぉ」

「だってさ…」


ぽふっと肩にグーパンチをすれば益々下がる眉。


さっきの怒りに満ちた表情とは一変して、怒られた小さな子どもみたいにしゅんとする。


そんな表情にいちいちきゅんとしてしまって。


時に俺より断然大人っぽく見えるのに、時に驚くくらい子どもっぽいことをしてくるんだから。


そんなギャップにだいぶやられてるのは自覚済みではあるけれど。


さっきの生徒からまさかあんな風に指摘されるなんて。


やっぱり顔に出ちゃうタイプなのかな、俺って…


「おい」


ふいに投げられた声にびくっと肩を揺らして顔を振り向くと。


「…いつまでんなことやってんだよ」


書架に腕を掛けて怪訝そうに眉を顰める…大野先生。


慌てて相葉くんから身を剥がし大野先生に向き直った。


「すっ、すみません!こんなとこで…」

「……」


ぺこっと頭を下げておずおずと目を上げれば、未だ眉を顰めて見つめてくる眼差し。


それがふいっと俺から外れて隣の相葉くんに注がれて。


「お前なぁ…何べん言ったら分かんだよっ!」


腕組みをして完全に元・担任と元・生徒の構図で説教が始まった。


「いやだってさ!あいつらにのちゃんのこと襲うとか言ったんだよ!?そんなん黙ってらんねぇし!」

「ちげーよバカ!それ以前の問題だって言ってんだよ。
大体なぁ、お前がダダ漏れてんのが悪ぃんだってこないだ言ったじゃねぇか!」


いつになく厳しい口調で相葉くんを諭す大野先生。


いやもしかしたら俺が知らないだけで昔っからこんな感じだったのかな…


「別に普通にしてるって!何でそんなに俺らが悪いみたいに言われなきゃなんないわけ!?」

「つかお前の普通がデレデレなんだよバカ!」


二人の言い合いについていけずにそっと一歩後ろに下がる。

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