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原稿用紙でラブレター

第5章 青いハートに御用心






言いながら悪びれなく俺の眉間をちょんと突いてくる相葉くん。


完全にからかわれている状態にまたも相葉くんのペースに飲まれてしまいそうで。


「そっ、それとこれとは違います!」

「え~そうかなぁ?俺ちょードキドキしたんだけど」


ニコニコして続けるその様子に段々と顔が赤くなってくるのが分かる。


そんな俺を面白がるようにわざとまた顔を近付けてキスをしてこようとするから。


「もっ…相葉くんっ!」


口を尖らせているその頬を両手でバチンと挟み込んだ時、ガラッと前方のドアが開いた音が響いた。


慌てて手を離して座り直すと、隣には涙目で頬を摩る相葉くんの姿。


調子に乗った罰だよ、って心の中で呟きながら軽く睨みを効かせる。


何も言わずぺこっと頭を下げる仕草がおかしくてふふっと笑みを溢した直後、入室してきた複数の生徒の話す声がここまで聞こえてきて。


"これどこにあったっけー"と本を返却にきたらしいその会話の中に思いがけない内容が含まれていた。


『なぁやっぱアレってほんとなのかな?』

『なにが?』

『いやだからにのみーと相葉ちゃんの』

『あぁアレね』


いきなり登場した自分たちの名前にぴくりと肩を揺らす。


隣を見ると同じように俺に視線を遣った相葉くんと目が合って。


…てか生徒に裏で"にのみー"って呼ばれてるなんて知らなかったんだけど。


しかも相葉くんも"ちゃん"付けだし。
まぁ歳近いからしょうがな…


『間違いないんじゃね?だってにのみー見てたら分かるもん。あの顔ヤバい』

『分かるー、好き好きオーラ出まくりって感じだよな』


…えっ、うそ!?


その発言に思わず両手で口を覆う。


え、そんなに顔に出てる…?


チラッと相葉くんを見れば嬉しそうにニヤニヤした顔をこちらに向けていて。


…っ、喜んでる場合じゃないってば!


『けど相葉ちゃんも相当じゃね?あんな分かりやすくて大丈夫?って感じ』

『だよな。にのみーにゾッコンなのバレバレ』


笑い声と共に"マジでそれ~"と茶化すように相槌を打つ声が聞こえ。


相葉くんもまたバツが悪そうに笑っている。

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