
原稿用紙でラブレター
第5章 青いハートに御用心
「大野先生?」
「うん…ねぇなんか知らない?大ちゃんのこと」
今日も仕事終わりににのちゃんちに寄って晩ご飯を一緒に食べた後。
ソファに並んでテレビを観つつ、今日の大ちゃんの話で気になったことを聞いてみた。
「う~ん…大野先生のそういう話はそういえば聞いたことないかも…」
「だよね?俺もさ、聞いてもらってばっかりで全然大ちゃんの恋愛のこととか聞いたことなくて」
高校の頃から大ちゃんには色々話を聞いてもらってはいたけど。
大ちゃん自身のことは勿論、ましてや過去の恋愛なんて一切口にしていなかった気がする。
あの意味深な口調と表情がどうしても忘れられない。
大ちゃん…
昔なにかあったのかな…
同じように隣でクッションを抱えて考え込むにのちゃんの横顔を見てハッと思い出した。
「あ!そういえば大ちゃんから言われたけどさ…俺たち噂になってるらしいよ」
「えっ?」
「3年の生徒が俺たちのこと怪しんでるって。気をつけろって言われた」
「そうなんだ…」
びっくりしたような顔の後、申し訳なさそうに眉を下げてこちらを覗き込む瞳。
「ごめん…なんか親しくしすぎたのかな、俺…」
「いや違うよ。俺がにのちゃんと居る時デレデレしてるからさ」
「でもそんなこと言ったら俺だって顔緩んでるって生徒に言われたもん」
「あ、でもそれはマジで気をつけてね。他のヤツらにあんま見せたくないし」
「…ねぇ、それ今の話とちょっと意味合い違ってない?」
言いながらきゅっとクッションを抱っこして笑う顔にきゅんとして。
「いいのっ!とにかくあんま可愛い顔しちゃだめ!」
「わっ!もう、なにっ…」
ぐいっとクッションごと体を引っ張って脚の間に座らせて。
いつもの仲良しスタイルで続ける。
「…大ちゃんがさ、俺たちみたいな恋愛は誰もが上手くいくもんじゃないんだ、って」
「…うん」
「いつまでもこんな環境で居られる保障は何もないんだ、って」
「……」
ボリュームを落としたテレビの音をBGMに、ぽつりぽつりと耳元で呟く。
何も言わずにこくんと頷くほっぺたに自分のをくっつけて。
「だから…俺、にのちゃんのこと大事だから…気をつけるね、ほんとに」
…これからもずっと、ずっと一緒に居たいからさ。
