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原稿用紙でラブレター

第5章 青いハートに御用心






いよいよ今週に迫った体育祭。


俺は用具準備係だけだから特にこれといってやることはないみたいだけど。


でもにのちゃんと一緒の係になれて良かった。


結局、用具の確認はにのちゃんにほとんどお願いした感じになっちゃったから。


当日どんな動きをするのかもにのちゃんに聞いとかないとな。


あれからにのちゃんとはいつも通りに戻って。


いやむしろ翔ちゃんたちに負けないくらいラブラブ度が増してるんじゃねぇかな。


教育実習中はお互いセーブしようって決めてたけど、ほぼ毎日にのちゃんちに行っている始末。


だって学校でも会えるのにまだまだ会いたいって思うんだ。


それくらい俺はにのちゃんといつでも一緒に居たいって思ってんだ。


きっとにのちゃんもそう思ってくれてるはず。


その証拠に授業中も事あるごとに後ろの俺と目が合うし。


職員室でも普通に話しかけてくるし、なんなら笑いかけてもくれる。


笑顔に関しては他の先生や生徒にはあんまり見せたくはないんだけど。


でもそんな、俺に向けられる一つ一つの仕草とか表情が堪らなく嬉しくて。


俺もついここが学校だってこと忘れそうになるから危ない。



「おい相葉」


背後から掛けられた声に振り向けば、ちょいちょいと指で合図する大ちゃんが居て。


加藤くんと一緒に教材研究の資料を纏めていた職員室の隅っこ。


もうすっかり先生呼びしてくれていた筈なのに、その呼び方はまるで高校の時のようで。


何となく嫌な予感。


くいっと顎で出口を指され、加藤くんに断って大ちゃんの後を追った。


物理準備室のドアを開けて入るや否や、くるりと振り向いたその顔は案の定思いっ切り眉を顰めていて。


「お前なぁ、いい加減にしろや」

「は?え、なにが?」


いきなり浴びせられた言葉にワケが分からなくて素直に聞き返すと。


「噂になってんぞ、お前らのこと」

「…えっ?噂?」

「ん。二宮先生と相葉先生怪しくね?って生徒の間で広まってんだよ」

「えっ!うそ!」


ただ驚きの声しか出ない俺に、腕組みをしてはぁと溜息を溢しつつ大ちゃんは続ける。


「嘘じゃねぇ。特に3年のヤツらな。俺にも聞いてきたぞ、あの二人デキてるんですかって」

「うっそ、マジで…」

「お前がなぁ、デレデレしすぎなんだよ!」

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