
原稿用紙でラブレター
第5章 青いハートに御用心
こんなグズグズの状態で上手く話せる訳もないのに。
逆に心配をかけてしまうに決まってるのに。
でも、どうしても相葉くんの声を聞きたくて。
俺からちゃんと"会いたい"って伝えたくて。
鼻を啜りながら手の甲で涙を拭いつつスマホを耳に当てた時。
『うわっ』という声が玄関の外から微かに聞こえ、同時にゴトっと物音がして。
…っ!?
もしやと思ったが早いか、ベッドから飛び降りて暗い玄関に駆けて行き勢い良くドアを開けた。
「ぁいてっ!」
ガンっとドアがぶつかった先にしゃがんでいたのは紛れもなく相葉くんで。
スマホを拾い上げて立ち上がるのを目で追っていた俺は、ようやく見えたその表情に堪らなくなり。
「相葉くんっ…!」
泣き顔に驚いたような相葉くんの腕をぐいっと引っ張って、ドアが閉まるのを待たずにぎゅっと抱き着いた。
「ごめっ…あいばくっ…」
「…にのちゃん」
肩に顔を埋める俺の背中にそっと回された腕。
そして後頭部を優しく撫でられる感触がして、堪え切れずに声をあげて泣いた。
「ごめんね、俺のせいで…」
「ちがっ…違うっ…」
遠慮がちに謝るその声に胸が締め付けられそう。
相葉くんのせいじゃないってちゃんとそう言いたいのに上手く呼吸が出来ない。
尚も優しく撫でられる手の平に包まれるように、おでこをぐりぐりと擦りつけるしか出来ない自分が情けなくて。
「俺ね…もうにのちゃんのこと泣かせないって決めてたんだ」
小さく、けれど意志のこもった声色。
光の届いていない玄関で、ただ感じるのは相葉くんの力強い腕と心地良い声。
ふいにはぁっと首にかかった吐息にぴくりと反応すれば。
「けど、また泣かせちゃったね…
ほんとに…ごめん…」
溢した吐息は相葉くんの想いが乗った溜息で。
発せられた謝罪と共に更にぎゅっと抱き締められる。
違うよ…
違うの、相葉くんっ…
熱の上がった相葉くんの腕からそっと体を離そうとすると、察したのかすぐに力の弱まった腕。
多分涙でぐちゃぐちゃだろうけど。
もうそんなことどうでもいい。
…ちゃんと、伝えなきゃ。
