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原稿用紙でラブレター

第5章 青いハートに御用心






のそのそと起き上がりデスクへと足を向けて。


本棚に並ぶファイルと一緒に大切に仕舞ってある一枚の紙を広げる。


相葉くんが高校生の頃に書いてくれた俺へのラブレター。


久しく開くことのなかったそこに書かれてあるのは、クセのある字で綴られた俺への想い。


純粋で真っ直ぐな言葉に胸がいっぱいになったのを覚えてる。


ラブレターを手にまたベッドへ戻り、ころんと横になってぼーっとそれを眺めた。


辿る文章が懐かしさを連れて、胸にじんわりと温かさが広がっていく。


そして中央線を跨いだ後半部分に書かれていたのは。


"にのちゃん。

俺は、にのちゃんが好きです。

誰よりも大好きです。

俺、ガキだけどにのちゃんのこと守れる自信あるよ。

だってにのちゃんのこと一番知ってるのは俺だもん。"


高校生の相葉くんの想いが詰まったその言葉。


自信たっぷりでストレートに伝えてくる愛情は今も昔も変わってなくて。


…そう。
相葉くんは何一つ変わってなんかいない。


いつだって俺が最優先。
何よりも一番に俺のことを想ってくれて。


そして誰よりも俺のことを分かってくれて。
俺の全部を受け入れてくれる。


何にも変わってない。


…そんな相葉くんが、俺は好きなんじゃないの?



すうっと流れ落ちた涙が鼻筋を伝ってシーツに染みを作っていく。


ぱたんと原稿用紙を閉じ、とめどなく流れてくる涙はそのままに枕に顔を押し付けた。



相葉くん…ごめんなさい。


相葉くんは何にも悪くないのに。


ずっと変わらず俺を想ってくれているのに。


ごめんね、相葉くん。


許してくれないよね、こんな俺のことなんか…


会いたいよ…相葉くん。


相葉くんっ…



ふいに頭上で音を鳴らしたスマホ。


一呼吸置いて枕から顔を上げ、手探りでそれを掴めば。


新着通知メッセージに浮かび上がった短い文。


《にのちゃんごめん。
どうしても会いたい。だめ?》


っ…!


まるでドラマみたいなタイミングでの相葉くんからのメッセージに、涙腺は完全に崩壊してしまって。


指は勝手にアプリの通話ボタンをタップしていた。

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