
原稿用紙でラブレター
第5章 青いハートに御用心
洗濯と風呂をやっとの思いで済ませ、なだれ込むようにベッドに転がる。
一人にさせてと言ったは良いものの、まだほとんど残っていた用具確認にかなり時間が掛かり。
全て終わって学校を出たのはいつも帰宅する時間を優に二時間は超えていた。
無音の部屋でぼんやりと横たわったまま。
食欲なんてある筈もなく。
はぁと溜息を溢しても胸の中のモヤモヤは全く排出されない。
そればかりか次々に湧き出てくる自己嫌悪で吐き気がしそうな程。
枕を手繰り寄せてぎゅっと抱き込む。
何でもいいから何かに縋っていたかった。
…どうして俺はいつもこうなんだろう。
あんなこと言うつもりじゃなかったのに。
教室で相葉くんを見た昨日、なんで?信じられないって女々しくも散々泣いてしまった後。
冷静になった頭でちゃんと整理した筈だった。
あれは何かの間違いだって。
相葉くんがそんなことする訳ないって。
きっと何か理由があったんだって。
そう自分に言い聞かせて、今日を迎えたつもりだったのに。
相葉くんの姿を見た途端に胸が苦しくなって、それ以上見てられなくて。
心配そうに窺ってくる瞳や頬を包まれた大きな手の感触に、また涙が込み上げてきそうになったのをぐっと堪えたんだ。
相葉くんだって俺の様子がおかしいのに気付いて当然だよね。
きっと相葉くんが話したかったのは急変した俺の態度のこと。
実習の翌日からあんなに変えてしまってたんだから。
でもそれは俺にも考えがあってのことだったんだよ。
相葉くんを大人にしてあげなきゃって…
じわっと込み上げてくる涙の膜で視界がぼやけてきて。
更にぎゅうっと枕を抱き締めて顔を埋める。
…そんなこと俺が言える資格ない。
相葉くんの話を聞こうともせずに、言うだけ言って逃げてばっかりの俺なんかに。
俺の方が相葉くんよりずっと年上なのに。
信じてあげられないでどうするの。
呆れてるよね、きっと…こんな俺のこと。
その証拠に毎日欠けることのない相葉くんからのLINEが今日は来ていない。
無理もないよね、あんな酷いこと言っちゃったんだ。
"嘘つき"って…
