
誰も見ないで
第14章 文化祭
しかし予想に反してその子の襲撃は早かった
「渡辺君、一緒に帰ってもいい?」
明日から頑張ろうと思ってたのに
今日からだった……
「えぇ、と……木下さん……」
帰りのHRが終わってすぐに声をかけられて、漸く覚えた名字を呼ぶと木下さんの表情がぱっと明るくなった
あ、なんか
失敗した気がする
木下さんを喜ばせるんじゃきっと意味ないんだ
諦めさせなきゃ
「俺、寄るところあるから一緒には帰れない」
先に帰ってて、と言っておいた瑞稀君がチラッと俺の方を見た
うぅ……
もっと強い言葉で言った方がいいのかな
人からの誘いを断るなんて俺の高校生活の中で初めて
というか、誘われたことすらほとんどないけど
とにかく何が正解なのかわからなくて不安
「どこに寄るの?」
「ぇ、と……本屋、に……」
「丁度良かった! 私も買いたいのあったんだよね!」
突然はしゃぎだした木下さんに、自分の負けを悟る
ゆ、誘導尋問だ……!!!
俺1人でゆっくり見たいから、とか
色々言い訳を考えるけど、どれも一緒に行くことすら出来ない理由にはならない
最終的に
「早く! 行こう?」
と腕を引っ張って立たされてしまった
