
君が桜のころ
第2章 花影のひと
「初めまして、九条公爵夫人。お目にかかれて光栄です」
凪子は清賀の経歴に興味を持ったように尋ねる。
「海外のお暮らしが長くていらっしゃるそうですわね?どちらのお国にいらしたのですか?」
「…英国にかれこれ18年以上です。仕事柄行ったり来たりはしておりますが…」
と、答えながら清賀の瞳は凪子の側に寄り添うように控える綾佳を捉え、凝視するように見つめた。
それに気づいた凪子がさりげなく綾佳を紹介する。
「…こちらは主人の妹、綾佳です。綾佳さん、清賀様にご挨拶を…」
綾佳はおずおずと膝を折り、挨拶をする。
「…九条綾佳でございます…」
清賀は手を差し出し、綾佳に握手を求める。
「…清賀礼人です…。綾佳さん、ようやくお会いできた…」
思わず漏れた本音のような言葉を凪子は一瞬聞き咎め、僅かに眉を寄せる。
だが静かにそのまま清賀の様子を観察した。
清賀は綾佳の手をしっかり握りしめ、まるで長年恋い焦がれていた人との再会が叶ったかのような眼差しで綾佳を見つめていた。
「…綾佳さんはおいくつでいらっしゃいますか?」
初対面の、しかも外国の雰囲気を漂わせる洗練された美男子に手を握られたまま質問を重ねられ、綾佳は伏目のまま小さな声で答えた。
「…18です…」
清賀の切れ長の瞳が見開かれる。
「…18…。そうですか…」
「…あの…私…」
清賀の思いがけぬほど強い力で握られたままの手に戸惑う綾佳だった。
それに気づいた凪子がさりげなく声をかける。
「ごめんあそばせ。清賀様。綾佳さんはまだ殿方と間近に接することに馴れていないのです」
清賀がはっと我に帰り、慌てて手を離す。
綾佳が急いで凪子の陰に隠れ、凪子に縋り付く。
「…これは失礼いたしました。ご無礼をお許しください」
丁重に詫びる清賀に慎一郎が苦笑しながら、綾佳を見る。
「お気になさらないで下さい。…妹はもう18だと言うのに、いつまでも子供で困ります。綾佳、清賀さんに失礼だ。凪子に甘えていないできちんとしなさい」
慎一郎に窘められ、綾佳は肩を落としながら清賀に謝る。
「…申し訳ございません…」
清賀は首を振り、誠実に詫びを重ねた。
「とんでもない。綾佳さんが謝ることはありません。私の方こそ、失礼いたしました」
優しい言葉に、綾佳はおずおずと清賀を見上げる。
驚くほど真剣で熱い眼差しがそこにはあり、綾佳は思わず清賀を見つめ返した。
凪子は清賀の経歴に興味を持ったように尋ねる。
「海外のお暮らしが長くていらっしゃるそうですわね?どちらのお国にいらしたのですか?」
「…英国にかれこれ18年以上です。仕事柄行ったり来たりはしておりますが…」
と、答えながら清賀の瞳は凪子の側に寄り添うように控える綾佳を捉え、凝視するように見つめた。
それに気づいた凪子がさりげなく綾佳を紹介する。
「…こちらは主人の妹、綾佳です。綾佳さん、清賀様にご挨拶を…」
綾佳はおずおずと膝を折り、挨拶をする。
「…九条綾佳でございます…」
清賀は手を差し出し、綾佳に握手を求める。
「…清賀礼人です…。綾佳さん、ようやくお会いできた…」
思わず漏れた本音のような言葉を凪子は一瞬聞き咎め、僅かに眉を寄せる。
だが静かにそのまま清賀の様子を観察した。
清賀は綾佳の手をしっかり握りしめ、まるで長年恋い焦がれていた人との再会が叶ったかのような眼差しで綾佳を見つめていた。
「…綾佳さんはおいくつでいらっしゃいますか?」
初対面の、しかも外国の雰囲気を漂わせる洗練された美男子に手を握られたまま質問を重ねられ、綾佳は伏目のまま小さな声で答えた。
「…18です…」
清賀の切れ長の瞳が見開かれる。
「…18…。そうですか…」
「…あの…私…」
清賀の思いがけぬほど強い力で握られたままの手に戸惑う綾佳だった。
それに気づいた凪子がさりげなく声をかける。
「ごめんあそばせ。清賀様。綾佳さんはまだ殿方と間近に接することに馴れていないのです」
清賀がはっと我に帰り、慌てて手を離す。
綾佳が急いで凪子の陰に隠れ、凪子に縋り付く。
「…これは失礼いたしました。ご無礼をお許しください」
丁重に詫びる清賀に慎一郎が苦笑しながら、綾佳を見る。
「お気になさらないで下さい。…妹はもう18だと言うのに、いつまでも子供で困ります。綾佳、清賀さんに失礼だ。凪子に甘えていないできちんとしなさい」
慎一郎に窘められ、綾佳は肩を落としながら清賀に謝る。
「…申し訳ございません…」
清賀は首を振り、誠実に詫びを重ねた。
「とんでもない。綾佳さんが謝ることはありません。私の方こそ、失礼いたしました」
優しい言葉に、綾佳はおずおずと清賀を見上げる。
驚くほど真剣で熱い眼差しがそこにはあり、綾佳は思わず清賀を見つめ返した。
