
君が桜のころ
第2章 花影のひと
「儂はお公家さんちに凪子を嫁にやるのは心配やった。うちは平民やからのう。格式も家柄もほんまに違う。
綾佳さんにも受け入れて貰えるかのうと思っていたんや。
だからあんたがこないに凪子を慕ってくれてほんまに嬉しか。綾佳さん、これからはここもあんたの家やと思うて、いつでも気楽に遊びにおいで。」
綾佳は温かい彌太郎の言葉を聴き、頬を染めながら頷いた。
春翔はそんな綾佳を嬉しそうに見る。
彌一郎が咳払いをしながら、おずおずと切り出す。
「…あ、綾佳さん。…私もよろしければお友達に…」
彌一郎の声は賑やかな声を上げながら部屋に入ってきた者によって掻き消された。
「まあまあ、可愛らしゅうお客様が凪子と一緒に来たち聞いて、急いできましたよ」
メイドを従えてにこにこ入って来たのは、一之瀬夫人、あきであった。
凪子は綾佳に紹介する。
「…母よ、一之瀬あきです」
綾佳は慌てて立ち上がり、挨拶をする。
「お母様、綾佳でございます。突然お伺いいたしまして…」
あきは綾佳を優しく見つめ、声をかける。
「堅苦しい挨拶はええっちゃ。…綾佳さん、よう来てくれたね。凪子はちゃんと勤まっておりますやろか?」
綾佳は強く頷く。
「はい、お義姉様がいらして私は本当に幸せです」
あきはぱっと笑った。
「それなら良かったわ。綾佳さん、今朝畑で取ってきたばかりのお芋の天婦羅を揚げてきたきに、たんと召し上がれ」
メイドがテーブルに揚げたてのじゃがいもの天婦羅を並べる。
春翔は綾佳に説明する。
「母さんは毎朝、畑に行ってるんだよ。これも母さんが作った畑のじゃがいもさ」
綾佳は目を丸くする。
「お母様が?凄い…!」
あきは結城紬の藍色の着物を着こなし、品のある顔立ちの美しい婦人である。
この婦人と畑仕事が一致せず、綾佳は驚いた。
「私は四国の農家出身なんよ。だから奥様なんちゆうて賢まって大人しゅうしているのが苦手でね。畑仕事は趣味なんよ」
明るく笑うあきは母性に溢れ、温かい人柄であった。
「母の天婦羅は美味しいのよ。フレンチフライみたいなものね。召し上がれ、綾佳さん」
凪子に促され、綾佳は黄金色の天婦羅を口に入れる。
「…美味しい…!」
揚げたてのじゃがいもはほかほかと甘く綾佳はこんなに美味しい天婦羅は初めて食べたと呟いた。
「…綾佳さんは可愛かねえ。ええ、妹さんが出来て…凪子も幸せやね」
あきは優しく笑った。
綾佳さんにも受け入れて貰えるかのうと思っていたんや。
だからあんたがこないに凪子を慕ってくれてほんまに嬉しか。綾佳さん、これからはここもあんたの家やと思うて、いつでも気楽に遊びにおいで。」
綾佳は温かい彌太郎の言葉を聴き、頬を染めながら頷いた。
春翔はそんな綾佳を嬉しそうに見る。
彌一郎が咳払いをしながら、おずおずと切り出す。
「…あ、綾佳さん。…私もよろしければお友達に…」
彌一郎の声は賑やかな声を上げながら部屋に入ってきた者によって掻き消された。
「まあまあ、可愛らしゅうお客様が凪子と一緒に来たち聞いて、急いできましたよ」
メイドを従えてにこにこ入って来たのは、一之瀬夫人、あきであった。
凪子は綾佳に紹介する。
「…母よ、一之瀬あきです」
綾佳は慌てて立ち上がり、挨拶をする。
「お母様、綾佳でございます。突然お伺いいたしまして…」
あきは綾佳を優しく見つめ、声をかける。
「堅苦しい挨拶はええっちゃ。…綾佳さん、よう来てくれたね。凪子はちゃんと勤まっておりますやろか?」
綾佳は強く頷く。
「はい、お義姉様がいらして私は本当に幸せです」
あきはぱっと笑った。
「それなら良かったわ。綾佳さん、今朝畑で取ってきたばかりのお芋の天婦羅を揚げてきたきに、たんと召し上がれ」
メイドがテーブルに揚げたてのじゃがいもの天婦羅を並べる。
春翔は綾佳に説明する。
「母さんは毎朝、畑に行ってるんだよ。これも母さんが作った畑のじゃがいもさ」
綾佳は目を丸くする。
「お母様が?凄い…!」
あきは結城紬の藍色の着物を着こなし、品のある顔立ちの美しい婦人である。
この婦人と畑仕事が一致せず、綾佳は驚いた。
「私は四国の農家出身なんよ。だから奥様なんちゆうて賢まって大人しゅうしているのが苦手でね。畑仕事は趣味なんよ」
明るく笑うあきは母性に溢れ、温かい人柄であった。
「母の天婦羅は美味しいのよ。フレンチフライみたいなものね。召し上がれ、綾佳さん」
凪子に促され、綾佳は黄金色の天婦羅を口に入れる。
「…美味しい…!」
揚げたてのじゃがいもはほかほかと甘く綾佳はこんなに美味しい天婦羅は初めて食べたと呟いた。
「…綾佳さんは可愛かねえ。ええ、妹さんが出来て…凪子も幸せやね」
あきは優しく笑った。
