
君が桜のころ
第2章 花影のひと
小客間では凪子と綾佳を中心に、和やかなティータイムが始まっていた。
あんなに綾佳を揶揄していた彌一郎は借りてきた猫のように…しかし綾佳をそっと見つめながら少年のように頬を赤らめる。
春翔はそんな彌一郎をにやにやしながら見る。
それに気づいた彌一郎は春翔をぎろりと睨む。
「やあやあ!なんと別嬪さんのお姫様が遊びにきちゅうやないかね!これは嬉しかあ!」
不意に賑やかな声が聞こえたかと思うと、この屋の主人、一之瀬彌太郎が入ってきた。
派手な背広にネクタイ、金の指輪、金の懐中時計の鎖をじゃらじゃら鳴らし、太い葉巻をふかしながら彌太郎はにこにこと綾佳に近づいた。
「…綾佳さんゆうたね?…やっとお目にかかれて嬉しかあ!凪子の婚礼で会えるかと思いよったが会えんくて、がっかりしよったきにのう!よう来たよう来た!」
綾佳は一瞬、驚いたが凪子の
「…父の彌太郎よ」
の言葉にほっとして、恥じらいながら立ち上がり、挨拶をする。
「初めまして。綾佳でございます。突然お伺いいたしまして、申し訳ございません」
彌太郎は手を振り、人懐こい笑みで綾佳を見つめる。
「ええんちゃ!凪子と来てくれて、嬉しか!…あんた、あん屋敷から出られたとね?」
「…はい…。凪子お義姉様のお陰です」
彌太郎はうんうんと相好を崩す。
「そりゃ良かったのう!わしゃ、あないな別嬪さんがず〜っとお屋敷に閉じこもっとるのは勿体ない話じゃあと心配していたぜよ。こんな可愛か嬢ちゃん、どんどん表に出ないけんわ」
彌太郎の言葉は荒々しいが愛情に満ちた言葉をかけてもらい、綾佳は胸が一杯になる。
綾佳は横に座り、ずっと綾佳の手を握っていてくれる凪子の美しい顔を見つめながら口を開いた。
「…私、凪子お義姉様がお嫁にいらして下さってから幸せなことばかりなのです。
…お義姉様は私に勇気と生きる希望を与えてくださいました。
…春翔さんもです。…春翔さんは私とお友達になってくださいました。私、生まれて初めてお友達が出来たのです。
…一之瀬様、お義姉様を嫁がせてくださり、ありがとうございます。
…あ、な、なんだか失礼な言い方をしてしまって…す、すみません!」
綾佳は自分の熱弁を恥じ入るかのように顔を伏せ、凪子の手を握りしめた。
その可憐な様子に彌一郎はぼうっとなり、彌太郎は
「…可愛かあ!なんちゅう健気な嬢ちゃんじゃ!」
と大感激した。
あんなに綾佳を揶揄していた彌一郎は借りてきた猫のように…しかし綾佳をそっと見つめながら少年のように頬を赤らめる。
春翔はそんな彌一郎をにやにやしながら見る。
それに気づいた彌一郎は春翔をぎろりと睨む。
「やあやあ!なんと別嬪さんのお姫様が遊びにきちゅうやないかね!これは嬉しかあ!」
不意に賑やかな声が聞こえたかと思うと、この屋の主人、一之瀬彌太郎が入ってきた。
派手な背広にネクタイ、金の指輪、金の懐中時計の鎖をじゃらじゃら鳴らし、太い葉巻をふかしながら彌太郎はにこにこと綾佳に近づいた。
「…綾佳さんゆうたね?…やっとお目にかかれて嬉しかあ!凪子の婚礼で会えるかと思いよったが会えんくて、がっかりしよったきにのう!よう来たよう来た!」
綾佳は一瞬、驚いたが凪子の
「…父の彌太郎よ」
の言葉にほっとして、恥じらいながら立ち上がり、挨拶をする。
「初めまして。綾佳でございます。突然お伺いいたしまして、申し訳ございません」
彌太郎は手を振り、人懐こい笑みで綾佳を見つめる。
「ええんちゃ!凪子と来てくれて、嬉しか!…あんた、あん屋敷から出られたとね?」
「…はい…。凪子お義姉様のお陰です」
彌太郎はうんうんと相好を崩す。
「そりゃ良かったのう!わしゃ、あないな別嬪さんがず〜っとお屋敷に閉じこもっとるのは勿体ない話じゃあと心配していたぜよ。こんな可愛か嬢ちゃん、どんどん表に出ないけんわ」
彌太郎の言葉は荒々しいが愛情に満ちた言葉をかけてもらい、綾佳は胸が一杯になる。
綾佳は横に座り、ずっと綾佳の手を握っていてくれる凪子の美しい顔を見つめながら口を開いた。
「…私、凪子お義姉様がお嫁にいらして下さってから幸せなことばかりなのです。
…お義姉様は私に勇気と生きる希望を与えてくださいました。
…春翔さんもです。…春翔さんは私とお友達になってくださいました。私、生まれて初めてお友達が出来たのです。
…一之瀬様、お義姉様を嫁がせてくださり、ありがとうございます。
…あ、な、なんだか失礼な言い方をしてしまって…す、すみません!」
綾佳は自分の熱弁を恥じ入るかのように顔を伏せ、凪子の手を握りしめた。
その可憐な様子に彌一郎はぼうっとなり、彌太郎は
「…可愛かあ!なんちゅう健気な嬢ちゃんじゃ!」
と大感激した。
