
君が桜のころ
第2章 花影のひと
春翔が玄関ホールに駆け足で辿り着くと、そこには凪子に手を引かれた綾佳が不安な表情で佇んでいた。
綾佳は白いシルクタフタのアフタヌーンドレスを着て、見事な真珠のネックレスをつけていた。
生花で飾られた帽子は白く、まるで花嫁のような可憐な美しさであった。
綾佳は見慣れた春翔を見つけ、ほっとした表情をした。
それが嬉しくて、春翔は思わず駆け寄る。
「綾佳ちゃん!来られたんだね!あの屋敷を出られたんだね!凄いよ、綾佳ちゃん!」
思わず手を握りしめる。
綾佳は恥ずかしそうに微かに笑う。
「…はい、お義姉様のお陰です」
凪子は綾佳の肩を優しく抱く。
「貴女が勇気を出したからよ、偉かったわね、綾佳さん」
「…お義姉様…」
綾佳は凪子を見上げ、目を潤ませる。
そこに必死で春翔を追いかけてきた彌一郎が現れた。
「おい!春翔、待て!まだ勝負は…」
しかし、彌一郎は玄関ホールに佇む綾佳を一眼見た途端、魂を抜かれたように呆然としてしまった。
…美しい絹糸のような黒髪、雪より白い透き通るような肌、三日月のような優しい眉、長くけぶるような睫毛、大きく潤んだ黒目勝ちな瞳、繊細な彫刻刀で刻んだような美しい鼻筋、ルビーのような唇…。
すらりとした美しいスタイル…長い手足はまるで西洋人のような優美さであった。
明らかに綾佳の美しさに度胆を抜かれたらしい彌一郎を見て、春翔は揶揄うように笑う。
「どうだい、彌一郎兄さん。綾佳ちゃんはちょっと美人なんてレベルじゃないだろう?…ちゃんと挨拶しろよな」
彌一郎はハッと我にかえる。
そしてあたふたと挙動不振になりながらしどろもどろに挨拶する。
「…は、初めまして。一之瀬彌一郎です。…な、凪子がお世話になっています」
高飛車な彌一郎がこんなにへりくだって挨拶するのは初めてだ。
春翔は改めて驚く。
綾佳は優雅に膝を折り、お辞儀する。
「初めまして。九条綾佳でございます。本日は突然お伺いいたしまして、申し訳ございません」
「い、いや!とんでもない!大歓迎ですよ」
綾佳に見つめられ、彌一郎は真っ赤になる。
春翔は意地悪く彌一郎を指差す。
「彌一郎兄さんと僕は今、取っ組み合いの喧嘩をしていたのさ」
喧嘩と聞いて、綾佳は怯える表情をした。
彌一郎は慌て手を振る。
「い、いや!喧嘩なんてとんでもない!春翔とは仲良し兄弟ですから!あはは!」
春翔と凪子は目を合わせて笑った。
綾佳は白いシルクタフタのアフタヌーンドレスを着て、見事な真珠のネックレスをつけていた。
生花で飾られた帽子は白く、まるで花嫁のような可憐な美しさであった。
綾佳は見慣れた春翔を見つけ、ほっとした表情をした。
それが嬉しくて、春翔は思わず駆け寄る。
「綾佳ちゃん!来られたんだね!あの屋敷を出られたんだね!凄いよ、綾佳ちゃん!」
思わず手を握りしめる。
綾佳は恥ずかしそうに微かに笑う。
「…はい、お義姉様のお陰です」
凪子は綾佳の肩を優しく抱く。
「貴女が勇気を出したからよ、偉かったわね、綾佳さん」
「…お義姉様…」
綾佳は凪子を見上げ、目を潤ませる。
そこに必死で春翔を追いかけてきた彌一郎が現れた。
「おい!春翔、待て!まだ勝負は…」
しかし、彌一郎は玄関ホールに佇む綾佳を一眼見た途端、魂を抜かれたように呆然としてしまった。
…美しい絹糸のような黒髪、雪より白い透き通るような肌、三日月のような優しい眉、長くけぶるような睫毛、大きく潤んだ黒目勝ちな瞳、繊細な彫刻刀で刻んだような美しい鼻筋、ルビーのような唇…。
すらりとした美しいスタイル…長い手足はまるで西洋人のような優美さであった。
明らかに綾佳の美しさに度胆を抜かれたらしい彌一郎を見て、春翔は揶揄うように笑う。
「どうだい、彌一郎兄さん。綾佳ちゃんはちょっと美人なんてレベルじゃないだろう?…ちゃんと挨拶しろよな」
彌一郎はハッと我にかえる。
そしてあたふたと挙動不振になりながらしどろもどろに挨拶する。
「…は、初めまして。一之瀬彌一郎です。…な、凪子がお世話になっています」
高飛車な彌一郎がこんなにへりくだって挨拶するのは初めてだ。
春翔は改めて驚く。
綾佳は優雅に膝を折り、お辞儀する。
「初めまして。九条綾佳でございます。本日は突然お伺いいたしまして、申し訳ございません」
「い、いや!とんでもない!大歓迎ですよ」
綾佳に見つめられ、彌一郎は真っ赤になる。
春翔は意地悪く彌一郎を指差す。
「彌一郎兄さんと僕は今、取っ組み合いの喧嘩をしていたのさ」
喧嘩と聞いて、綾佳は怯える表情をした。
彌一郎は慌て手を振る。
「い、いや!喧嘩なんてとんでもない!春翔とは仲良し兄弟ですから!あはは!」
春翔と凪子は目を合わせて笑った。
