テキストサイズ

僕は君を連れてゆく

第50章 こんなにも

翔が、なんか変だ。

上の空…ってわけでもないけど。

話したくないならそれで構わないけど…

もう少し頼ってくれてもいいのになって。

一緒に住もう、と声をかけたのは俺だった。

翔とは俺の行き着けのbarで出会った。

出会った頃の翔は今より感情を表に出す人間だったと思う。

カウンターで一人で飲んでる翔に声をかけた。
下心、はあった。
でも、翔はΩだった。
俺と同じ。

俺にはもう、番(ツガイ)がいる。

忙しい人でなかなか会えないのが寂しいけど。

そんな、彼に一緒に暮らさないかと言われている。

言われたときは心臓が飛び出そうな位驚いた。

そして、子供を作らないか、と。

ずっと、言って欲しかった言葉を貰えた。

だけど、すぐに返事が出来なかった。

翔のことを考えたら…

こんなことを言ったらすぐに翔は出て行く、と言うに決まってる。

翔にも幸せになって欲しいんだ。


翔の部屋にはあまり入らないようにしている。

原稿を書いてるのも知ってるし、締め切りが近いとかピリピリする時だってあるから。

クローゼットの中に何があるのかわからないけど、
そこから俺を遠ざけようとしてるはわかる。
きっと、翔は無意識でやってるんだけど。

翔にきちんと話さないといけない。

俺のこと。

その時、翔は翔のこと話してくれるかな。

何を聞いたって驚いたりしない。

やっぱりな、って笑ってやるよ。





ストーリーメニュー

TOPTOPへ