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僕は君を連れてゆく

第37章 背中合わせ



あいつは何をやってもそれなりで、
悔しくなるくらい男前な日があれば
体から発する色気に眩暈がする日もあって。

一目惚れだったんだと、今は思う。

とにかく、どんな奴なのか知りたくて。
毎日、話しかけてた。

ヤンチャに舌をだしておどける顔。
仔犬のように黒目を真っ直ぐ向けてくる顔。

その全ての顔を見たくて。

その全ての顔を俺だけのものにしたくて。

強引に、そう。
強引に体の関係を持った。

そうして、やっと俺のものになったと思った。

でも、和也は何も言わなかった。

それからしばらく体だけの関係が続いて…


ふと、気がついた。

俺らってなんなんだろうって。

友達?
親友?
セフレ?
恋人?

和也は言った。


「ハッキリ名前なんてつけなくていいよ…」


どうして?
なんで?
俺だけなのか、この、今の関係をハッキリさせたいと思っているのは。

出会ってから2年が過ぎた頃、就職先をどうするか
悩んでた時。

和也は町を出ると言ってきた。

ずっとこのままでいられると思っていたのに。

このまま。
セフレでもない、友達でもない。
なんでもない、このまま。

そんなの…

俺は何も伝えていなかった。
お前を、お前と。
和也とこれからどうしていきたいのか。

最初から好きで、好きで、どうにかしたくて。

初めて手を繋いで帰った道。

ヤってることヤってるのに妙に恥ずかしくて。

でも、絡めた指に唇を寄せたら、和也の指先は
震えていた。

「どこにも行くな。
俺のそばにいてくれ。
好きなんだ。」

和也は
「ずっと、待ってた…」

そう言った。

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