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僕は君を連れてゆく

第37章 背中合わせ

◇◇◇

もう、こんな時間だ…

壁にかかる時計に目をやればすでにてっぺんを越えていた。

昨年度から海外(アジアが中心)に支店を持つようになってそことの連絡が俺の主な仕事になった。
支店には現地の人間も多くいるから英語でのやり取りが普通で。
今も習いながらの仕事だけど、やりがいを感じている。

あれから…
俺たちは少し変わった。


和也は何も言わなくなった。



浮気を疑われていたことに腹がたったが、
反対の立場になったら俺も同じことを思うかもしれないと。

きちんと否定したことが伝わったんだと思う。

だって、バカバカしい。

浮気なんて普通の人間がやることじゃない。

何より俺は器用な人間じゃない。

浮気なんて…


パソコンを閉じた。

デスクの上のカレンダー。

「あっ!」

忘れていた。

それはもう、すっかりと。

誕生日。

それと、結婚記念日だ。

忘れないようにってわざわざ和也の誕生日にしたんだ。

全然、意味ないじゃん。

「この時間に空いてるケーキ屋…」

検索をかけたがヒットしない。

じゃぁ、花屋か?
それもヒットしない。

「めんどくせぇ…」

え?
俺…
今、なんて言った?


頭を振った。


疲れてるんだ。
そう、俺は疲れてるんだ。

だから、めんどくさいなんて…

「…なんで…」


和也との出会いは運命だったと思う。
なんとか、結婚までこぎ着けた。
大袈裟かもしれないけどドラマみたいな燃えるような恋だったと思う。

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