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僕は君を連れてゆく

第37章 背中合わせ


息を切らして、俺に駆け寄ってくる櫻井さん。

「ご、ごめん。待たせて…はぁー、めっちゃ走った…」

汗までかいてる。

「どうしたの?」

「はい、ちょっと早いけどお誕生日おめでとう!」

小さい箱が俺の目の前に。

「……」

「ケーキ!好き?」

嘘でしょ。

こんなことしないでよ。

さっきまで、ついさっきまで
俺はこの夜空の下。
一人ぼっちだと思っていたのに。

こんなことされたら…
俺…

「あれ?甘い物苦手だっけ?」

こんなに息切らして
大粒の汗かいて
俺のために

「…っき…」

嬉しい。

「好き…です…」

「泣くほど好きなの?」

泣いちゃってる、俺。

小さい箱をギュウっと抱き締めそうになって。

「あっ!!」

腕を引かれて俺は櫻井さん腕の中。

グシャッと箱が落ちた。

「あっ…」

せっかく、買ってもらったプレゼント。
落としてしまって。

「なんで泣くの?」

やっぱり、櫻井さんからいい匂いがする。
俺はその体に腕を回した。

「…嬉しくて…ありがとうございます…」

ゆっくり体を離して櫻井さんを見つめた。

「すごい、汗…」

ハンカチをだして額に当てて汗を拭いた。

「二宮さん…」

小さく声で俺の名前を呼んでもう一度、抱き締められた。

腕の中
なんて、暖かいんだろう。

このまま
もっと…

俺は櫻井さんの背中に腕を回し力を込めた。

櫻井さんの右手が俺の頭を撫でる。

「櫻井さん…」

俺たちはそこでしばらく抱き合っていた。


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