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僕は君を連れてゆく

第37章 背中合わせ


つけ麺屋を出た。

駅まで並んで歩く。
と、急に櫻井さんが。

「ね、あそこで待ってて!ね?」

櫻井さんが指を差したのは駅から続く公園で
夏には噴水が上がるところ。

櫻井さんは俺に待て、と手でやりながら走って駅の方に消えていった。

俺、明日は誕生日だ。
全然、忘れてた。

誕生日だけど櫻井さんからの話からすると潤は休日出勤だろうし。

誕生日を祝ってくれる友人なんていないし。

こう考えると俺ってつくづく淋しい奴だな。

「はぁ…」

ため息でちゃうよ。

空はどんよりしていて夜空に瞬く星なんて見えなくて。
潤とスレ違ってからこの空は俺の心を写しているかのように曇り続き。

雨にならないのは…
なんでだろう…

櫻井さん…

どこ行っちゃったんだろう…

携帯が震える。
画面には櫻井さんの名前。

「はい。もしもし。」

『帰っちゃった?』

どうやら、走っているようで息を切らしている。

「まだ、いますよ。どこにいるの?」

『良かった…待ってて!ね?絶対に!』
と、通話は切れた。

なんなんだよ…

こんな夜空の下に一人ぼっちにされたら、
考えたくないことばかり考えちゃうじゃん。

にしても…
櫻井さん、何してるんだろう。

走ってたよな…


少し風が出てきた。
その風が夜空を覆う雲をゆっくり動かしてくれる。


「星、見えた…」


後ろから走ってくる足音がした。
振り返ったら、櫻井さんが走ってくる。



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