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僕は君を連れてゆく

第37章 背中合わせ




「淋しいよね…ずっと、淋しかったんだよね。」

少しかがんで、俺と目線を合わせた櫻井さん。
右手が俺の頭に。

優しくポンポンと撫でてくれた。



そう。
そうなんだ。
俺、淋しかった。


潤と家族になって。
同級生から友達になって。
友達から親友になって。
親友から恋人になって。
恋人から家族になった。

家族になったけど、俺は潤の父親でも母親でもない。もちろん、子供でもない。

だって、そういうこと、しないでしょ。

俺はね、潤に抱かれたい。

セックスしたいの。

それは、俺と潤の関係だからデキルことじゃないの?

こんなこと思う自分が恥ずかしくて。

潤から拒否される度、
俺は厭らしい人間なんだって。
スケベでヤることしか頭にない人間なんだって。

「俺、変な奴じゃない?こんなこと考えてる俺…
頭狂ってるって思われない?」

「そんなこと…そんなこと思うわけないだろっ!!」

声を荒げた櫻井さん…も、泣いてる。

「好きな人に、愛してもらいたいって思うのは当然なことだろ…」

俺の頬に伝う涙を櫻井さんはスーツのポケットから出したハンカチで優しく押さえてくれた。

「櫻井さんも…笑ってる顔のほうが…素敵です…」

お返し、ではないけど、俺も自分のハンカチを出して櫻井さんに渡した。

俺のハンカチで涙を拭く櫻井さん。
エヘヘと笑った顔。


こんな人に愛されると幸せなのかもしれない。


こんな人に…


潤がしてくれないなら…


頭の隅の隅の方で、一番、考えてはいけないことを
考え始めた俺がいる。


「帰ろっか?」


俺は頷いて櫻井さんの隣に並んだ。



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