
僕は君を連れてゆく
第37章 背中合わせ
「どうか…しました?」
「いや、すいません…なんか、俺、本当にダメな奴で…」
櫻井さんのパートナー。
雅紀。
名前を聞いて思い出した。
櫻井さんとは幼馴染みで「昔から翔ちゃんが大好きでした。」と、太陽のようなキラキラした笑顔で
ウェディングパーティーの時にスピーチしていた。
それに、
男、女、年齢を問わず人気者で誰とでも仲良くなれる人だと。
そこにいるだけで、温かくなるような人。
と、櫻井さんが雅紀さんのことを話していたのを思い出した。
雅紀さんは雅紀さんで、
何より、顔がカッコ良くて、頭も良くて。
優しい。誰より俺のことを分かってくれる。
そう、櫻井さんのことを話していた。
パーティーで口づけを交わすとき、頬に唇を寄せた櫻井さんの頬をバチンと両手で挟み込み、雅紀さんはそれは、それは、濃厚な口づけを櫻井さんにしたんだ。
照れて真っ赤になる櫻井さん。
嬉しそうに櫻井さんの耳元でなにかを話す雅紀さん。
あんなに幸せそうだったのに…
「言わなくても分かってよ!って言うのはどういうことなんでしょうか…」
網の上のお肉がだんだん、黒くなっていく。
白い煙がモクモクと登ってる。
「口にしてくれなきゃ、俺はあいつが何を考えてるのかさっぱり、分からない…」
炭になりそうなお肉をトングでつまみ大皿へ移す。
櫻井さん。
口にしたって、伝わらないよ。
言葉にしたって、伝わらないよ。
それを分かろうとしてくれないと。
目を見て話し合わないと。
