
僕は君を連れてゆく
第37章 背中合わせ
「時間がたてば…か…そうだな、変わるよな。」
潤がテーブルを離れ冷蔵庫に向かう。
冷蔵庫を開けて缶ビールを取り出しプルタブを引いてゴクゴクとビールを流し込んでいく。
「はぁぁぁ。」
「何だよ…そのため息。潤は?子供ほしくないの?」
「別に今、じゃなくてもいいだろ。仕事が軌道にのってんだ。余計なこと考えたくない。」
「余計?余計なことなの?子供が欲しいってのは潤にとっては余計なことなの?」
「今は、だよ!今は時期じゃないって言ってんだよ。」
「浮気してるの?」
「はぁ?何言ってんだよ?疲れてんだよ…やめてくれ…」
「だっておかしいじゃん!2年だよ?なーーーんにもないんだよ?キスだって…」
「じゃあする? 」
「なにそれ…バカにすんなよっ!俺がどんな気持ちで…」
なんで、俺が泣くんだ。
悪いことしてるのは潤じゃないか。
「そういう気にならないんだよ…お前、鏡見てみろよ…俺が帰ってくるまで寝てたろ?ヨダレの痕あるし。そのTシャツも…何年着てんだよ…よれよれで…」
俺は自分を下から上まで見た。
帰ってきて、すぐ風呂に入りろくに髪も乾かさないでソファーでゴロゴロしながらゲームして。
このジャージも高校生の頃からのもの。
このTシャツも…いつのだ…
「もう、俺に気を使わないんだろう?適当にやってんだろ…疲れるよ…本当に…もう、いい加減に聞きたくない…ご馳走さま…」
下を向いたまま書斎に入っていった。
その背中を追いかけることは出来なかった。
