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僕は君を連れてゆく

第37章 背中合わせ

◇◇◇

「俺、あの子ずっとお前、狙いだと思ってたよ。」

朝の朝礼。

寿退社する女子社員が頭を下げ、部長から花束をもらっている。

「あんなの媚売ってるだけだろ?」

周りの拍手の音に紛れる程度の音量で同僚の櫻井が話しかけてきた。

「そんなことないだろ?お前のとこ子供いないのはなんでですか?って、俺、しつこく聞かれたぞ?」

子供ね。
みんな、聞くよね。

最近じゃ、オブラートに包んでくるようになったけど。
若い子はズケズケと下世話な話を放り込んでくるから嫌になる。

「それは、ご迷惑をおかけしました!」

「誘われただろ?」

まぁ…ね…

この部署に移動してきて2年。
一番、華やかな子だったのは確か。

何度が仕事の相談に乗ってほしいとせがまれ、
食事をした。

が、それだけ。

彼女はその、続きを期待しているのもわかっていた。

でも、そんな気は起きなかった。

和也を裏切ることになる…

「もう、昔のことだろ?」

「モテる男は、言うことが違うね~」

みんなが彼女に祝福の声をあげている。

「今日は7時からお店、とってあるので!みなさん、出席して下さいね~」

他の女子社員が声をあげている。

「出るの?」

「お前は?」

「お前が出るなら出ようかな…」

「怒られないの?」

「誰に?」

「パートナーさんに?」

「怒られないよ。お前は?」

「うちはね…問題ない…」

櫻井の会話の間、が気になったけど、上司が
さぁ、早く終わらそう!と手を叩いてそこを突っ込むことは出来なかった。

今日も、帰れない。

いや。
そうじゃない。

今日も、帰りたくない。

顔を見たくない。

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