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僕は君を連れてゆく

第28章 ハンプ


自転車で町を一周しても一時間かからない。
小さい町。

一人、一人の名前もこの様子じゃ覚えられそうだ。

もうすぐで、交番というところで交番の中を覗きこむ影が。

「どうしました?」

俺はこぐ足を早めて声をかけた。

「あぁ!お巡りさんっ!大変だよ!人が死んでる!」

なんだって?!?!?!?

「ど、どっ、どこで?」

「常田のばぁさんが死んでる!」

「ときたさん?」

その男の人は俺の前を走って誘導してくれて、俺も後を追って走った。

「ここだよ!」

交番からは少し離れていて隣町へ続く橋とは反対のところにある。

「さぁ、入ってくれよ!」

「お邪魔しますっ!」

玄関を開けた途端、鼻につく臭い。

俺は手で鼻をつまんで口で息をしながら足を踏み入れた。
「常田のばぁさん、汚えなぁ。なんだ、ここは!ゴミ捨て場か?」

そこは足の踏み場がないくらい荷物が。
強盗か?
にしては、台所も…

どこに遺体があるのかとソロリソロリを足を進めながら奥のふすまが目にはいった。

その時

「常田さん!!!」

「先生っ!!!」

俺に見向きもせずにまっすぐにふすまの奥に入っていった。
白衣をきた黒い頭の小柄の男。

「常田さん…」

先生と呼ばれた男に続いていくと布団の上で動かない老婆がいた。

「先生、常田のばぁさん、死んじゃってるよな?」

「あの、私、巡査の松本と言います。」

先生と呼ばれた男は振り返った。

それは、忘れもしないあいつだった。

「二宮…」


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