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僕は君を連れてゆく

第28章 ハンプ


中学生になった。

母さんは相変わらず、夜働いていた。
時々、男を連れて帰ってくることがあった。

そんな日は俺は公園で夜、過ごした。

だって…

気持ち悪いから…

優しく俺の頬を包んでくれた手の爪はながくて真っ赤で。

俺の髪の毛をシャンプーするたびに「猫っ毛は母さんに似たのね」と言ってくれていた、母さんの髪は茶色くて、バサバサしてた。

隣で俺が寝てるのに…

知らない男は母さんに覆い被さって

隣で俺が寝てるのに…

知らない男に「寝てるから聞こえないわよ」って母さんは言って

気持ち悪い

母さんが

気持ち悪い

母さんの聞いたことない声を聞いた。

聞きたくないのに、聞こえてくる。

中学三年になった。

母さんはいつも同じ男を連れて帰ってくるようになった。

その男は金持ちなのか、俺に新しい洋服やゲーム、靴…来る度に置いていった。

ある夏の暑い日。

夏休みでお前と学校のプールに行って、図書館で宿題して帰ってきた。

もう夕方なのにジリジリと暑くて、ただ、いるだけで汗が垂れるような日だった。

母さんが仕事に出て、いつものように風呂に入って出たら、玄関を叩く音がした。

チャイムを鳴らさずにドアを叩くのは
俺が知ってるなかではアイツだけだ。

無視してたのに、あまりにドンドンとドアを叩くから鍵を開けた。

そいつは汗をタオルで拭いながら、
「寝てるかと思ったよ」と言った。

俺の頭から足の先までゆっくりと見て、
「入ってもいい?」と聞いた。

「母さん、店だよ?」

「知ってる。和也くんの宿題見てやってくれって頼まれたんだ。」

なんとなく、嘘くさいって思ったけど
俺は家の中へ通した。




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