テキストサイズ

知らない世界

第29章 見えない恐怖

こんなときに留守にするなんて、不安だよ。
でもいたずらなのか何なのかわからないのに、事を大きくするのも嫌だし。


「はぁ・・・学校行きたくねぇな」


大きくため息をついて、家を出た。
ポストの入れ口を、配達の人には申し訳ないけど、テープで入れられないように閉じた。
足取りも重く、駅へ向かう。
通勤通学時間帯、人通りが多い。
横断歩道の赤信号、どこかのシティーマラソンのスタートライン並に、人が立ち止まっている。
一番前で信号機を見ながら青になるのを待っていると、急に体がふわっと前に出た。


「うわぁっ!」


スピードは出ていないものの、左折の車にぶつかりそうになった。


「バカヤロー!!」


そんな勢いでクラクションを鳴らされた。
転んだ俺に、回りの人はクラクションで気がつく。
でも心配してくれる人は誰もいない。
通勤通学時間帯、人の事を気にする余裕なんてあるわけないから、それは仕方がない。
信号機が青になり、倒れている俺を横目に通りすぎていく人を見ていた。
俺は何かにつまづいたわけじゃない、誰かに背中を押されたんだ。
ゆっくり立ち上がると、また信号機は赤になった。
少し後ろに立ちも、また青になるのを待った。


「誰なんだよ」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ