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Best name ~ 追憶 ~

第1章 私の記憶

『おいおいっ!?アイルっ?!』


『いやぁっっ…いやっ……いやっ…』



血のついた手を慌ててゴシゴシとこする私に

手を洗っていたソウタさんが
驚いて駆け寄る。






待ち合いに患者さんがいなかったのが幸い…。


マナさんもとんできて顔を出した。



『ちょっと大丈夫~?!
すごい音が……って、アイル?!』






ドクドクドクっ……



バクバクバクっ……




私の心臓がひとりでに大きな音を立てて
どんどん呼吸が苦しくなる。




〃なに…これ…苦しい。私……死んじゃう…〃




うずくまる私を
ソウタさんが抱えて連れ出してくれた。




『すまんすまん!
こんな~アレなの初めてだったナァ?
驚いたろ?……わりかったナァ…アイル~』



『ハァっ…ハァっハァっ…~~っ…』




『どしたぁ~…アイル?大丈夫~?』

『ハハ…。よくある、アレだ…
あ~マナミ、お前も新人の頃あったろ~?
アイルはまだ限りなく素人に近いからナァ~…

お前、物覚えが良いからな…
ついつい頼りきっちまったなぁ
すまんすまん…』




『ごめんっ…なさいっ……ハァっ…ハァ』





『気にするな~?よくあることだ』





落ち着くまで
ソウタさんが、ゆっくりと
私の背中をさすってくれた。






素人……だから…


初めてだったから……




そんなことは、ない。





私は……わかっていた。


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