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Best name ~ 追憶 ~

第1章 私の記憶

『アイル~?
今日は買いモン行くぞぉ?
お前の必要なモンまだちぃ~っとも
揃ってねぇからなァ~…』


私の新しい生活が始まる。


ソウタさんと2人、街に出掛けて
生活に必要な物を調達していた時のこと…





『~ナンだぁアイル?
同じよーな服ばっか……~…もっと~…
女の子らしいのは買わねえのかぁ?』




『……ぇ…』




〃オンナノコ……ラシイ…〃








意識してたつもりはないけど
全くなかったけれど……


私が手にとっていたのは


デニムにTシャツ…


シンプルで飾り気もない物ばかりだった。





ハッとしたような感覚と

少し…ゾクゾクっとする感覚…。







『こんなよーなのとか…
~こんなのも…着てたろォ?
仕事は、お前は私服で構わんしナァ…
好きな服~…』





ソウタさんが
かつて私が着ていたようなものを
イメージしたであろう洋服を
手にとっては私に勧めてくれる。






『い…いいの…っ。
もう…そういうのは……。
大人に……なるの…っ』






〃オンナノコっポイ カッコウ ナンテ
シチャ イケナイ…〃



何かが私の脳をよぎっていた。



〃オンナノコニ ナンテ
ミラレタラ イケナイ〃




『……』




……思い出したくない。


忘れたい。








なかったことに…したい。


なかったことに、なってるんだから。





着たくない、見たくもない…。



少しでも思い出せば…
私はこうしていられなくなる。




無意識に私の中に焼き付いていたであろう
そんな思いが、行動に表れている事に
私は中々、自分で気付けていなかった。



思い出したくない。


それは一番つよいものだったと思うけれど…



〃前のような私でいたら、また
同じような事が起こるかもしれない〃




強迫観念のような


そんな無自覚な潜在意識で
自分が色んなものを拒絶している事に
気付くのには少し時間がかかった。




ハッとしてソウタさんを見る。



…何か……変だと思われただろうか?



内心ビクビクしてソウタさんを見上げる。


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