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Best name ~ 追憶 ~

第1章 私の記憶

『おかえり!アイル……!』



『……』



小さい頃から
聞きなれたソウタさんの言葉だったけど

少し違う意味なようで
この時うまく返事が出来なかった



ソウタさんの車に乗せられて向かったのは
私の育った、海の近い
関東の片田舎……ではなく


県境の大きな川を越えて
都心の街を抜けた
下町情緒あふれる土地だった


『よ~し着いたゾォ!
疲れたろうアイル~?
まず中でゆっくり休めよ~?』


『……』


商店街の隅に、デンと構えるのは

動物病院…

そして裏手は自宅になっている



『…ォ…オジャマ……します』



『?~オジャマしますじゃないだろォ?
〃タダイマ〃だアイル~!
今日からここがオマエん家だぞ!』


『ぇ…。タ…タダイ…マ…?』


違和感たっぷりだったけれど
従って答えた



『よし!~ホラ、こっち~…お前の部屋だ』


ソウタさんが2階の一室をみせてくれた

ベットと少数の家具…

そのまますぐに住めるというように
用意してくれていた


『ソウタさん…あのぉ…私……私』



何から…

何をどう言っていいかわからない私を
ソウタさんがシャットアウトする



『るせぇなぁオマエ~♪
細けぇこたぁまずイイ!

お前はお前でぇ……何だ、色々
大変だったんだからよぉ…

あ~でもアレだァ…何か困ったり
言いてぇコトぁ俺に全部言え?そんだけだ』


『…ソウタさん…』

〃大変だった…なんて
私は悪いことをした身なのに…〃



『~ここが、お前の家だ…
のびのびしてろ?
俺が~…今日から、親代わりだ…』



『……え?』




『ぁ…いや~
親…とまでは言わねぇけどよ…

オマエ~…まだ18だろぉ?
ちぃと自立すんのが…親元離れんには
早かっただけだ

あ~…なぁ?
まぁ…保護者くらい
いとかねーとだろォが…?

……こんな…オッサンでもよぉ…』



親に見離された私を
〃自立するだけだ〃
なんて…絶妙なことを言う


『……ソウタさん』

『あ~?…ったくオマエ~…』



『……ありがとう…』



『…バカ…ヤロ
硬てぇこと一々言うな…バカヤロ
~腹減ったろ?メシにすんぞォ~?』



なんのへんてつもない
私の、ありのままの言葉に
ソウタさんは真っ赤になっていた


照れるとすぐ口が悪くなるソウタさん

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